岐阜市が審査会の答申を受けて出した決定書全文
岐阜市行契第50号
決定書
異議申立人 岐阜市茜部本郷1−63−3
希望社・丸泰特定建設工事共同企業体
代表構成員 桑原耕司
あなたから、平成16年1月30日付けでなされた公文書公開請求決定処分に係る異議申立てについて、岐阜市情報公開条例(昭和60年岐阜市条例第28号。以下「条例」という。)第11条第1項の規定により、岐阜市情報公開・個人情報保護審査会の審査を経て、次のとおり決定します。
主文
平成15年12月2日付け岐阜市行契第103号により、低入札価格調査票(以下「本件公文書」という。)のうち調査基準価格(以下「本件情報」という。)を一部非公開とした公文書公開請求決定処分(以下「原処分」という。)は取り消し、公開する。
決定の理由
1原処分は、本件情報は、「市の機関が行う事務又は事業に関する情報であって、契約に係る事務に関し、地方公共団体の財産上の利益又は当事者としての地位を
不当に害するおそれがあることが明らかなもの」で、条例第6条第1項第4号イの規定に該当するとして、本件情報を一部非公開とした。
本件情報がこの規定に該当するためには、この「おそれ」が、一般的・抽象的なものでは足りず、具体的な支障が生じる蓋然性が存在するものでなければならないと解される。
この点に関して、
- 掛け率の類推による業者見積金額の引上げについては、本件工事は、総合建築工事であり、調査基準価格は、あくまで本件工事の設計金額の総額に過ぎないた
め、これを公開した場合、業者見積りにより決定している項目が多数あることから、一定の幅の中でおおよその値が推測されるに過ぎず、個々の項目ごとの掛け
率までもが推測されるとは考えられない。また、類推されるおおよその掛け率までも保護すべき積極的な必要性があるとは認められない。さらに、見積りを依頼
された業者は、設計金額を引き上げようとすれば、掛け率が分からなくても引き上げることは可能であり、掛け率の類推が設計金額の引上げに直接的に結びつく
とは考えられない。
- 調査の回避及び落札価格の高止まりについては、現実に低入札調査に該当した事例が業務委託については相当数存在し、それにより業務委託について落札価格の
高止まりが生じている事実はなく、調査基準価格の公開と落札価格の高止まりについての因果関係があるとは認められない。また、現実に特に仕事を取るために
安く入札しようとする者にとっては、あまり影響があるとは考えられない。さらに、低入札調査制度の本来の趣旨は、ある一定の価格より低い設計金額になると
適切な契約の履行がなされるかどうか疑わしいため、その業者の経営状況等の内容を調査するというものであり、別段調査基準価格を公開したとしても、それよ
り高い価格であれば、契約内容に適合した履行が可能であるという前提に立っていることを示すものに過ぎず、自信のある業者は、調査を受けるだけの話である
とも考えられる。
- 本件工事における状況について言えば、本件工事は、公共施設の建設に係る工事に該当し、予定価格が約4億7千万円という大規模な工事であるため、工事項目
も相当数に上るものであり、掛け率が類推されて業者見積金額を高く設定されることにより設計金額が引き上げられるとは考えにくい。また、本件公文書に係る
不服申立人の公文書公開請求は、一般競争入札により落札者が決定した後になされたものであり、さらに、本件工事は、不服申立人が調査基準価格を下回る価格
で入札し、低入札調査を受けた結果、市において契約内容に適合した履行ができるものと認められ、落札をしているという事情もある。
以上によれば、一般的な判断はともかく、少なくとも本件に限定して考えれば、本件情報を公開することにより、市の財産上の利益又は当事者としての地位を不当に害するおそれがあるとは認められず、本件情報は、公開条例第6条第1項第4号イ(2)の規定に該当しない。
2 以上により、主文のとおり決定する。
平成16年7月5日
岐阜市長 細江茂光