国会議員より寄せられたご意見

07年12月、衆参両国会議員722名に向けて「改正建築基準法の再改正要望書」(以下、要望書と略)を発送しました。この要望書に対して国会議員より寄せられたご意見を紹介します。

なお、国会議員へは要望書と共に以下のアンケートを送付しました。その回答もあわせてご覧下さい。

質問1 07年6月20日に施行された「改正建築基準法等」の改正内容は、総合的に見て国民の要望に添ったもの(国民の総意)であると思いますか?
質問2 「改正建築基準法等」の再改正について、どう思われますか?
質問3 今回お送りした弊社作成の『改正建築基準法等の再改正要望書』についてご意見ください。
質問4 建築の安全性は、建築確認・検査制度で国家が保証すべきだと思いますか?

山内俊夫 参議院議員(自由民主党)

質問1の回答 おおむね添ったものである。
質問2の回答 再改正の必要はないが、運用の緩和は必要。
質問3の回答 おおむね賛同できる。
質問4の回答 そう思う。

1.精度の高い耐震ソフトの開発を国がやるべし。そして、廉価にて関係者が手に入りやすくする。そのソフトを活用して、国民の安心度を高める。

1.あとは、施工中の手抜き防止を、いかにシステム化して防ぐのか!

1.運用の哲学部分を、関係者全員がテーブルにつき検討すべし。

2007年12月25日

高井美穂 衆議院議員(民主党)

質問1の回答 あまり添っているとはいえない。
質問2の回答 根本的に検討し再改正すべき。
質問3の回答 賛同できる。
質問4の回答 そう思わない。

(質問2の回答理由)事件への対応は当然だが、現場の声を聞かず、国会でも十分な議論をさせず、政府・与党が過剰な反応で改正を拙速に進めたため。

(質問3の回答理由)非常にわかりやすく簡明にまとめられている。

2007年12月27日

中川秀直 衆議院議員(自由民主党)

質問1の回答 おおむね添ったものである。
質問2の回答 再改正の必要はないが、運用の緩和は必要。
質問3の回答 その他(別紙にて回答)
質問4の回答 そう思う。

中川議員からは、アンケートに加え、要望書「4.建築基準法等の再改正の概要」「5.偽装行為に対応するための提案」の各項目に対して、以下の回答をいただきました。

要望書4.(1)改正法の過剰な制限の廃止

『2.適合性判定審査の対象範囲を、11階以上または31m以上の建築物に限定する。』について

構造計算適合性判定制度(いわゆるピアチェック)は、通常の確認審査では見破ることが困難な耐震偽装があったこと、高度な構造計算の法適合審査においては専門的な工学的判断が必要とされること等から導入されたものであり、耐震偽装やその後のサンプル調査の事案を踏まえ、高度な構造計算(いわゆるルート2以上の構造計算)を行った建築物を構造計算適合性判定の対象としたところです。 なお、構造計算適合性判定については、原則として2名以上の構造計算適合性判定員(以下「判定員」という。)によって審査を行うこととしてきたところですが、改正法施行後の審査の実績等を踏まえ、単純な構造形式である整形な建築物や比較的小規模な建築物については1名の判定員により審査することとするなど、業務の効率化について技術的助言「建築物の安全性の確保を図るための建築基準法等の一部を改正する法律等の円滑な運用について」(平成19年12月17日付け国住指発第3425号)を通知したところです。

『2.確認審査期間を最大30日(適合性判定を伴う場合は45日)に縮小する。』について

いわゆる1〜3号建築物に係る確認審査期間は、構造計算適合性判定に係る期間(14日以内)を含め、原則として35日以内とし、大臣認定を受けた構造計算プログラムによらない場合等にあっては、構造計算書の詳細な審査に相当の期間を要する場合があり得ることから、構造計算適合性判定に係る期間を35日以内で延長できることとしています。 ただし、現在、各指定構造計算適合性判定機関等において実際の審査期間(補正や追加説明書の提出のために申請者側で検討している期間を除く。)を大幅に延長する事案は少ないと聞いています。

『3.1回の事前相談で確認申請(本申請)が受理されるようにする。』について

実際に事前相談(又は事前審査)に提出される建築確認申請書(添付図書を含む。)については、設計者側の理解度や事前チェックの徹底に相当の差があるのが現状であり、必ず1回の事前相談で正式に受理することとした場合、法令への不適合や補正等の対応ができない不整合のために確認済証を交付できない事案が少なくないものと考えられます。

『4.構造計算の安全証明書の提出を不要とする。』について

建築士が建築物の安全性を確かめず、又は安全性を有していないことを知りながら、安全なものとして委託者に構造計算書等を引き渡してしまった場合には、委託者はもちろんのこと、物件の購入者等の関係者に対しても、広範かつ多大な損害を与えてしまうことになるため、今回の改正において、建築士に対し、構造計算によって建築物の安全性を確かめた場合の証明書の交付を義務付けたところです。

『4.工場の認定表・機材の大臣認定書・各種部品図等について、設計段階で決定されておらず、かつ適法性判断に不必要なものの添付を不要とする。』について

大臣認定書の写しの添付を求めるのは、その工法、部材、材料等が、計画している建築物に採用可能なものであること、適用される建築基準関係規定に適合すること等をチェックする必要があるためです。 ただし、事務手続きの合理化を図るため、建築基準法施行規則の一部改正(平成19年11月14日)により、大臣認定書の写しについては、審査機関が認定内容を確認できる書類(当該認定書の写し、認定の内容を収録した図書等)を有していない等の理由により、申請者に提出を求める場合に限って添付を要することとなりました。 なお、確認申請時において、ホルムアルデヒド発散建築材料や防火材料の具体的な使用材料が決まっていない場合には、使用材料の種別(例えば、F☆☆☆☆、不燃材料など)を示せばよく、認定書の写しの添付は不要です。 また、鉄骨製作工場が決まっていない場合には、構造耐力上主要な部分である接合部並びに継手及び仕口の構造詳細図に鉄骨の溶接部を書き込むことにより、認定書の写しの添付は不要です。後に鉄骨製作工場が決まった段階で認定書の写しを提出していただき、それに基づき中間検査等が行われることになります。 さらに、設備機器等の具体的な品番が決まっていない場合には、一定の仕様範囲(寸法、材料、性能等)を示した標準的な図面あるいは一以上の採用候補機種の図面を添付し、当該設備機器等又は当該設備機器等と同等以上の設備機器等を用いることを明示すればよく、完了検査時等には、採用した具体の機種を説明していただきます。

『6.確認申請図書の不備は、再申請ではなく補正で対応できるようにする。』について

新しい建築確認手続きでは、記載内容の整合性のとれた申請図書の提出を求め、これまでより申請図書の訂正に厳しくのぞむことになりました。後で差し替えればいいとして十分に図面や計算書をチェックしないまま提出するなど、残念ながら、ずさんな申請図書が少なくなかったためです。 とはいうものの、建築士が通常の注意を払って設計した場合でも、いわゆるヒューマンエラーは起こるものです。その点を考慮し、新しい建築確認手続きにおいても、軽微な不備がある場合の補正、不明確な点がある場合の追加説明書の提出が認められるようになっています。

『7.建築確認後の計画変更については、ひとまず軽微な変更の範囲を拡大し、その場合には再申請ではなく補正で対応できるようにする。』について

計画変更の確認手続きが不要な「軽微な変更」については、施行規則第3条の2に規定されています。建築基準法施行規則の一部改正(平成19年11月14日)により、間仕切りや開口部の変更であって構造安全性、防火・避難性能が低下することのないもの等については、計画変更の確認手続きが不要な「軽微な変更」として扱い、計画変更に係る確認申請は必要ないこととされました。 また、施工の関係上やむを得ず発生する可能性の高い変更事項について、それへの対応を当初の確認申請時の図書においてあらかじめ検討しておくことにより、計画変更の確認手続きを行わないで済ますことができます。 さらに、建築物の計画上、建築主等の意向により発生が見込まれる変更事項への対応方法があらかじめ検討されている場合、例えば、分譲共同住宅について、一定の間取り変更が生じても、構造耐力上、防火・避難上、採光上等支障がないことがあらかじめ確かめられている場合が考えられます。 計画変更手続きを要しない軽微な変更や上記の「あらかじめの検討」については、(財)建築行政情報センターのホームページにガイドライン(計画変更の円滑化のためのガイドライン)が平成19年12月28日より掲載されています。 なお、計画変更の確認手続きが必要な場合においても、簡易な計画変更に対して特別に短い審査期間を設定するなどの方法により手続きを迅速に行うよう、建築主事等や指定構造計算適合性判定機関等に要請しているところです。もちろん、大臣認定に係る変更手続きにおいても迅速な処理に配慮します。

『8.中間検査は、基礎コンクリート打設前の1回に限定する。』について

工事施工段階において建築基準への適合を確保するためには、工事施工者による施工管理や建築士による工事監理が適切に行われることが重要であり、それを補完するものとして、建築基準法に基づく中間検査制度が設けられているところです。 今回の改正により、階数が3以上である共同住宅に係る二階の床及びはりの配筋工事の工程について、全国一律に中間検査を実施することとしましたが、その他の中間検査を実施する区域、期間、対象建築物や特定工程の内容については、従来どおり、特定行政庁が地域の実情を勘案して指定することとしています。 先般、第三者機関の検査において指摘された超高層マンション上層部での施工ミス(配筋不足)の事例等もあり、中間検査の対象を一律に基礎コンクリート打設前の1回に限定することは妥当でないと考えます。

『9.完了検査の検査内容や基準を、改正前の程度に緩和する。』について

今回、確認審査等に関する指針(平成19年国土交通省告示第835号)において完了検査の方法を明確に示しておりますが、完了検査の検査内容や基準は、今回の改正により強化されたものではありません。

要望書4.(2)建築確認・検査制度そのものの扱いについて

『1.建築確認・検査の対象事項を、「集団規定」および「単体規定のうち避難施設・耐火建築物 など社会的調和と生命の保護に直接影響するもの」に限定する。』について

「社会的調和と生命の保護に直接影響するもの」が何を指すのかは不明ですが、建築確認・検査の対象となる現行の建築基準関係規定は、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もって公共の福祉の増進に資することを目的に、最低の基準として定められたものです。

『2.建築確認・検査制度の法的性格、および、特定行政庁には法適合性判断以上の権限はなく、建築物の適法性・安全性を保証する責任もないことを、法に明文化するとともに国民に周知させる。』について

特定行政庁は、建築基準法令の規定等に適合しない違反建築物等について、当該建築物の建築主等に対し、適宜、報告を求めたり、是正措置を命ずる権限を有しており、その限りにおいて、建築物の適法性・安全性を確保していく責任があるものと考えています。

『3.設計責任を負う者を明確にするために、設計業務を受託する建築士事務所は、意匠設計・構造設計・設備設計およびその他の業務のうちいかなる業務について委託を受け責任を持つのかを明示した設計業務委託契約書を、作成しなければならないこととする。』について

従来より、建築士事務所の開設者は、設計又は工事監理の受託契約を締結したときは、その内容を記載した書面を建築主に交付しなければならないこととされています。設計又は工事監理の一部を委託する場合にその概要及び受託者の名称等を書面に記載することとされており、これにより設計業務のうち、いかなる業務について委託を受け責任を持つのかが明確化されています。 また、この書面の交付について、従来は建築主と建築士事務所の開設者(すなわち元請け設計者)との契約にのみ義務づけられていましたが、今回の建築士法改正により、建築士事務所同士(すなわち、元請け・下請けの関係)の契約についても義務づけたところです。

要望書4.(3)建築確認後の計画変更の扱いと工事監理制度について

『1.「4.(2)1」で提案した検査対象事項に関係しない計画変更には、申請・届出等の手続きを必要としないものとする。』について

計画変更を行う場合、原則として、変更後の計画が建築基準関係規定に適合するかどうかについて、当該変更箇所の工事に着手する前に確認を受けなければなりませんが、「軽微な変更」については確認手続きを要しないこととされています。 計画変更の確認手続きが不要な「軽微な変更」については、施行規則第3条の2に規定されていますが、そもそも当該建築計画に適用される建築基準関係規定に関係のない計画変更は、確認手続きを要しません。

『2.現在の工事監理制度は廃止し、建築士法の工事監理の定義は削除する。』
『3.施工段階における建築士の役割を、「設計図書に記された機能が空間構成され、デザインコンセプトが維持されているかの確認」および「発注者の要望実現・品質向上・コスト低減等に資する計画変更提案に対して技術的判断を行い、設計図書を変更すること」と定め、建築士の業務として法に明記する。』について

工事監理について、建築士法で「工事と設計図書を照合し、それが設計図書のとおりに実施されているかいないかを確認すること」とされており、一定の規模以上の建築物の工事監理は建築士の独占業務となっています。 構造計算書偽装問題などを通じて、工事監理が適切に機能していない実態が明らかになっており、社会資本整備審議会答申において、工事監理の方法・内容や工事監理者の責任を明確にすべきとの指摘がなされており、これを踏まえ、工事監理のガイドラインの策定等を今後、予定しています。

要望書5.偽装行為に対応するための提案

『1.偽装等の違法行為者に対する、よりいっそうの厳罰化』について

構造計算書偽装問題等を踏まえ、違反設計を行った設計者に対する罰則をはじめとして、建築基準法や建築士法の罰則体系を全面的に見直し、例えば、違反した場合に多数の者の死亡に繋がるおそれのある技術基準規定(構造計算を要する建築物に係る構造耐力基準、大規模建築物の主要構造部に係る防火基準等)について、当該規定に違反した建築物の設計者・建築主等は、従前は50万円以下の罰金とされていたところ、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処するなど、大幅な強化が図られたところです。

『2.設計業務に関する違法行為や法不適合図書の通報制度の創設』について

近年、事業者内部からの通報(いわゆる内部告発)を契機として、国民生活の安心や安全を損なうような企業不祥事が相次いで明らかになりました。このため、そうした法令違反行為を労働者が通報した場合、解雇等の不利益な取扱いから保護し、事業者のコンプライアンス(法令遵守)経営を強化するために、公益通報者保護法が平成18年4月に施行され、建築基準法、建築士法もその対象となっているところです。 設計業務に関する違法行為等の通報(内部告発含む)については、既に、国土交通省ホットラインステーション(行政に関する要望・意見等を受付け)、国土交通省公益通報窓口(事業者等における法令違反行為に関する内部告発等を受付け)により対応するほか、個別の相談についても対応しているところです。

『3.違法行為による損害の補償を担保するための保険制度等の創設』について

建築士による設計業務等に関する賠償事故に対応するため、今回の建築士法改正により、建築士事務所に閲覧を義務づけている書類に、賠償保険の加入の有無等について記載することを義務づけたところです。 なお、(社)日本建築士事務所協会連合会では会員外の保険加入も認めておりますし、(社)日本建築士会連合会、(社)日本建築家協会においても、同様の保険制度が運営されております。 また、欠陥住宅についての消費者保護を図る制度として、昨年の通常国会において「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律」が制定され、新築住宅の売主等に、保険制度や供託制度を用いた、瑕疵担保責任履行のための資力確保が義務付けられたところです。

『4.建築士事務所の営業もしくは業務委託契約にあたって、財務状況や業績、委託者の損害の補償担保制度への加入状況等の情報を委託者に開示することを義務付け』について

建築士事務所の開設者は、業務実績、建築士の氏名、設計等の賠償責任保険の加入状況等について記載した書類を、建築士事務所に備え置き、設計等を委託しようとする者の求めに応じ、閲覧させることとなっています。

2008年1月18日

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