当社代表桑原によるコラム「遊自耕」は、隔月発行の建築情報誌「飛翔」誌上にて連載しています。飛翔の送付をご希望の方は、飛翔送付申込フォームよりお申込下さい。(送付無料)
「大阪府立K高等学校 特別教室棟他2棟大規模改修工事」
入札方式:一般競争入札
開札日時:2010年5月
予定価格:124,400,000円(税抜)(事前公表)
最低制限価格:105,800,000円(税抜)(事前公表)
業者名称 | 入札金額 | 適用 | |
---|---|---|---|
1 | K建設 | 105,800,000円 | |
2 | H工務店 | 105,800,000円 | |
3 | K工業 | 105,800,000円 | くじ引きで落札 |
(中略) | |||
14 | S総建 | 105,800,000円 | |
15 | K社 | 105,800,000円 | |
その他11社 | 辞退・入札書不着 |
この表は、大阪府の最低制限価格制度適用の公共工事の入札状況を示すものです。
ある建設会社の社長が私の所に来て、言うのです。
「この入札の仕組みでは、企業は全く価格競争ができない。こんなことを許していたら建設業がなり立たない。」
「何とかならないものですかね。こんな方法を止めさせるために、建設業者が連帯する道はないでしょうか。桑原さんにその音頭をとってもらいたい。」
中央公契連が定めたモデルに準拠した最低制限価格制度では、最低制限価格は予定価格の85%前後になります。
つまり、この制度は、予定価格の85%〜100%という15%の幅でしか入札額の選択を出来なくするものですが、落札を目指すためには最低制限価格で入札する選択肢しかないことは、誰でもわかります。
この最低制限価格が事前公表されていると、上記のように、くじ引きをして落札業者を決めることになります。
事前公表されていなくても、入札会社は最低制限価格を狙ったダーツゲームをするだけで、いずれにしてもこの制度は、入札会社の企業努力などとは無関係に、偶然によって落札が決まる異常な仕組みであるといわざるを得ません。
知らないからいいが、知ってしまったら誰もが怒りを感ずると思います。
高い落札率が保証される制度なのに、その建設業者でさえ、怒りをもっています。
ましてや、工事費を高止まりさせるこの制度を、一般市民が求めるわけがありません。
税収が縮減し、財政支出を合理的に小さくしていくことが求められている時なのに、この官僚による競争排除・高額落札は、官制談合と言わざるを得ません。
形の上での談合がなくなっても、頑迷に予算執行権限をにぎりしめ、国民の利益を犯しつつ、建設業に君臨する官僚のやり方には、絶対に従うことはできません。
ちなみに、“最低制限価格制度の速やかな導入について検討を進める”と発表している岐阜市の「岐阜市中央卸売市場耐震補強工事」では、まだ最低制限価格が設けられていませんでしたので、当社が63.3%で落札することができました。
知的で、理屈に合わないものとは妥協なく戦う若い知事。
始めは大丈夫だろうかと思っていましたが、経過を見ていて感服し、少しでもお手伝いしたいと思っています。
最低制限価格制度による競争排除が、制限価格の事前公表という全く露骨な形で行われていることを、知事はすでにご存知のことと思います。
税収の減少下での財政の建て直しという緊急課題への挑戦として、この知事の足元の問題に是非取り組んでいただきたいと思います。
頑張ってください。
敬具
−追伸−
橋下知事殿、今号の内容について、ご意見をお聞かせください。お待ちしております。