5月23日、岐阜市立七郷小学校校舎増築工事の入札が公募型指名競争方式で行なわれ、当社は村瀬建築(株)と共同企業体(JV)を構成してこの工事を落札しました。
岐阜市の予定価格(税込み)は230,000,000円であり、当JVは191,604,000円で落札しました(落札率83.3%)ので、市はこの工事を予定価格より38,396,000円安く発注できることになります。
さて、この工事に関しても、前回受注した「北東部コミュニティーセンター」と同様、市により低入札価格調査が行なわれました。その中で、本誌前号のこの欄「今年度も公共工事の改革を進めます」で「次回の工事では、請負人も意見を述べます」として掲げた7つの提案について、市の担当者の考え方が示されました。
その後、建築主の代理者(コンサルタント)として建築主の側に立ち、建築の企画や設計、工事発注や設計改善(VE)、工事監理を実施する業務をJCM(日本型コンストラクション・マネジメント)と総称し、実践してきました。また、これと同時に、建設業界に対してもさまざまな問題提起を行ってきました。
【工事変更に伴う増減金額の決定方法について、事前合意を行なう】
この提案についての市の見解は「市が市の基準で決定する」という相変わらずのもので、請負者と対等に協議を実施するという視点がありません。北東部コミュニティーセンター工事で合意に至らなかった『工事の単価』は、今も闇の中であります。
いっそのこと「公共工事は片務契約で、生かすも殺すも役人のサジ加減」と言うのなら、そう受け止めて対応もするのですが、そうとも思えません。
そもそも、公共工事の請負金額については、こんな根本的な疑問があります。
さて、今回の七郷小学校の入札では、入札に際して「見積内訳明細書」の提出が義務付けられました。
「見積内訳明細書」は、一つの建築工事を構成する数多くの専門工事の工事毎に数量を拾い出し、それら一つ一つに具体的な単価を乗じ集計したものに、総合建設会社の経費と利益を加えたものです。
したがって、それは、入札参加者がその工事の工事費を現実的に調べ判断して提出されるものであるはずです。当JVが作成したこの工事の見積内訳明細書はA4版335頁で、この作業に約500,000円の費用がかかりました。
ところが、指名を受け入札に参加している会社で実際にこのような作業を行なっている会社はほとんどないと思われます。
発注担当者が決定する予定価格は、天下り役人などを介して建設会社に伝わり、その予定価格を基に業者間で調整が行なわれ、受注予定者が決定されます。そして、受注を譲った業者は、受注予定者が作成した見積内訳明細書を受け取り、それを受注予定者の提出する入札金額より高い金額になるように書き直して提出する。つまり、入札はその金額を入札箱に投入するだけのセレモニーなのです。(これを通常談合と呼びますが、露見しない限り、その入札は公平、公正、競争的に行なわれたものとして扱われています。)
岐阜市では予定価格が事前に公表されており、行政職員が予定価格を漏洩しているとは言えませんが、談合の仕組みを分りながら改革を試みないという意味で、談合の擁護者といっても誤りではありません。当JVを除く他の16JVが出した見積内訳明細書を見れば、今回の入札でも同様のことが行なわれた形跡が見つかるかもしれません。
希望社は談合には加わりません。談合をして大きな利益を求めるのではなく、適度な利益に止めて低い金額で受注することで、市の財政支出の縮減に貢献していきたいと思っています。
一方、高い工事費での契約を目論むのでない代わりに、公共工事の請負契約の曖昧で片務的な部分を正していく努力を続けます。
今回の七郷小学校増築工事における工事費増減の方法については、以下の提案をします。
上記の提案は、「請負契約は発注者と請負人が対等な立場で締結されるべきである」「この工事の請負金191,604,000円の根拠を成しているものは、当JVが提出した見積内訳明細書以外に存在しない」という当たり前のことに基づいたものです。
今回の工事が双方にとって納得できるものになるよう、発注者である岐阜市長からの妥当で具体的な見解が示される事を期待しています。