創業者桑原によるコラム「遊自耕」は、隔月発行の建築情報誌「飛翔」誌上にて連載しています。飛翔の送付をご希望の方は、飛翔送付申込フォームよりお申込下さい。(送付無料)

遊自耕 不常識を食らう シリーズno.146

時間で管理しなくてはいけないのか?

労基署からの指導

希望社の就業規則には、始業・終業時刻に関する定めがありません。

個々の労働契約で1日の労働時間を定めている社員と、そうでない社員がおり、前者が決められた時間を超えて働いたときには、労基法に則り超過勤務手当を支払っています。

一方、後者の始業・終業時刻は本人の裁量に任されており、会社は管理していません。但し、夜10時から朝5時までの間の勤務や、会社の定めた休日の勤務を上職者から命じられたときは、超過勤務手当を支払っています。

労基法は、始業・終業時刻を労働契約や就業規則に明示しなければならないと定めており、当社は今、「始業・終業時刻を定めて就業規則に明記し、届け出るように」との指導を、労基署から受けています。

ブラック企業ではない

当社は、始業・終業時間を定めないのは会社の経営理念に基づくもので、指導はお受けできない旨返答しましたが、労基署はそれには触れず、繰り返し同様な指導を行ってきています。

始業・終業時刻を定めないでおいて、社員に長時間労働をさせ、超過勤務手当の支払いを免れようとしていると、希望社を捉えているからなのか、単に時代遅れの陳腐な法律の執行者としての義務からなのか、私にはわかりません。

もちろん、労基署が労働者を悪徳経営者から守る役割を担っていることは分かっています。しかし私は、社員を道具として酷使するようなことはしていません。厳しく接してはいますが、大切にしています。

社員が選んで働いている

希望社には定年制がありません。体力や気力が落ちてきても働きたいという高齢者や、保育所に子供を預けていられる時間だけ働くお母さん。早朝は弱いので正午から働く、自宅で働く。月間に何日、1日に何時間。希望社の社員は多様な働き方を自ら選んで働いています。

労働時間を定めず自己の裁量で働く人たちは、時間で拘束されて働くことを望まず、自らこの制度を選択して働いています。ですから、希望社には一律の始業・終業時刻は馴染まないのです。

あまり例をみない希望社の裁量労働制度は、会社と社員が相互に信頼して成立しています。希望社には世間で言われるような長時間労働はありませんし、当然賃金の不払いもありません。

労基法違反で私をお縄に!

大嘘吐き営業マンが入社したことがありました。行ってもいない訪問先を幾つも並べ立てたため、「変だぞ、事実を話せ」と問うと、それきりぷっつん。「勤務中の賃金を支払え」との言い分に、「支払うが業務報告を」と求めると、労基署に飛び込み不払い賃金請求を申し立ててきました。

労基署は、彼の勤務表の記載を以て就労があったと判断し、賃金を支払えと当社に指導をしてきましたが、従わなかったため、労基法違反(賃金不払い)で私を地検に書類送検。NHKや一流新聞に一斉に報道されました。

その後当社は、「このままではあなたの負け、彼の嘘を自ら証明しないと進展しない」という地検担当者のアドバイスに従い、彼の語った訪問先に一つ一つ電話して、訪問営業の事実がないことを確認、不起訴処分となりました。

労基署の指導を安易に受け入れず、確固たる経営理念に基づいて主張を貫いたことで、“盗人に追い銭”をしなくて済みました。以来23年間、私は「労基法違反で私をお縄に!」と公言しています。

今回の件も、労基署には十分調査いただき、意見を戦わせて、問題の本質を浮き彫りにできればと願っています。私も、納得して改めることにやぶさかではありません。

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