当社代表桑原によるコラム「遊自耕」は、隔月発行の建築情報誌「飛翔」誌上にて連載しています。飛翔の送付をご希望の方は、飛翔送付申込フォームよりお申込下さい。(送付無料)

遊自耕 不常識を食らう シリーズno.133

入札制度に競争性を

建築費が高騰して、発注者受難の時代を迎えています。これは、本誌でも紹介してきましたとおり、アベノミクスによるところが大ですが、それ以前に、現在の入札制度そのものにも重大な問題があります。そして、この公共工事の発注の問題が民間工事にも影響を及ぼし、建築工事を安く発注することを阻んでいます。

岐阜市建築工事と希望社 前編

H13年度まで、岐阜市が実施するほとんど全ての入札は、入札参加業者を官僚が指名する「指名競争入札」で行われ、指名を受けた業者の談合によって落札業者が決められてきました。

H14年度から18年度にかけて、一年度に70件前後ある建築工事の入札のうち1〜2件で一般競争入札が実施され、入札条件を持った業者であれば自由に入札に参加することができるようになりました。しかし、この方式が実施されても、落札者は談合によって決められていました。

但し、H15年度に行われた一般競争入札2件の内の1件は、当社を代表とする共同企業体が落札率76.3%で落札しました。当時の落札率の平均は92〜94%で、この落札によりそれまでの談合ルールに小さな穴をあけたのです。

また当社は、平成13年度から指名願いを提出していましたが、市は6年間にわたり当社を指名しませんでした。そこで当社は、H19年4月、「市は恣意的に当社を指名競争入札から排除している」と岐阜地裁に提訴しました。

その結果、H21年に岐阜地裁で一部勝訴の判決が出され、また、翌22年には名古屋高裁で全面勝訴の判決が出されました。

なお、この訴訟が始まった年度に、市は初めて当社を指名しました。しかし、一般競争入札については市は繰り返し不当な参加条件を設定し、当社はH20年度まで入札に参加することができませんでした。

岐阜市建築工事入札と希望社 後編

H21年度から当社は積極的に入札に参加し、23年度までの3年間で合計15件落札しました。そして、この当社の入札参加により、H21年度と翌年度の一般競争入札の平均落札率は、一気に75%前後に下がりました。この2年間は、公共工事入札が談合によらずに決まる状況を実現したことになります。

ところが、H23年度から〔最低制限価格制度〕が導入され、市が定める「最低制限価格」より安い金額の入札は無効とされるようになりました。そして、この「最低制限価格」は毎年引き上げられ、その価格より低い金額で入札できるにもかかわらず高い金額で入札せざるを得ない工事が増えていきました。

また市は、「入札価格」と「価格以外の要素」を総合的に評価して落札者を決める〔総合評価方式〕の対象工事範囲を拡大したり、「価格以外の要素」の中に地域貢献項目を増やしたりしてきました。その結果、多くの工事で、その工事の品質等と直接関係のない評価項目により加算点が低くなってしまう業者の入札参加を阻むことになりました。

この〔最低制限価格制度〕と〔総合評価方式〕の導入・強化により、〔総合評価方式〕における加算点が低い当社が最低制限価格ぎりぎりの金額で入札をしても、「当社よりはるかに高い金額で入札した、加算点の高い会社」に勝つことはできなくなりました。これでは公共工事から締め出されたと同じです。

H25年度の一般競争入札は、11件が入札者ゼロで中止となり、入札者があった18案件の平均入札者数は2.3社という結果でした。平均落札率も92.6%と全く競争性のない状況になり、全てが指名競争入札で、全てが談合でなされていた時代に戻ってしまいました。

入札に競争性を取り戻す

公共工事の入札から競争性を骨抜きにし、高額落札を誘導する官僚は、国民から付託された業務を果たしていると言えるでしょうか? 血税を無駄に支出する入札制度を立案し実施している官僚は、懲罰に付し断罪すべき対象ではないでしょうか?

読者の皆様に実態をお伝えし、この無体を解決するために立ち上がるよう呼びかけます。特に、建設業を営む方たち、国および地方自治体の議員、弁護士の皆様のご意見をお聞きし、改革の行動をご一緒したいと思っています。

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