当社代表桑原によるコラム「遊自耕」は、隔月発行の建築情報誌「飛翔」誌上にて連載しています。飛翔の送付をご希望の方は、飛翔送付申込フォームよりお申込下さい。(送付無料)
今世間で話題になっている太陽光発電には、大別して2つの形があります。
一つは、個人の住宅の屋根に太陽光パネルを設置して発電し、発電時にその家庭で使用し切れず残った電力は、「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」に基づく高い金額で電力会社に買取ってもらうというものです。
夜間など太陽光発電ができない時間帯には電力会社から安い金額で電力を買って使い、また、電気温水器など大量の電力が必要な電気機器にも、電力会社からの低料金の深夜電力を使用する。そうすることで、高い売電価格と安い買電価格の差額が儲けになる。
こんな魅力的な謳い文句で宣伝がなされ、そう思い込まされた人々の間にこのシステムは普及しているわけですが、太陽光発電設備設置時に相当の設置費用を負担していることを考えると、実際にはいくらも利益が得られるものではありません。
もう一つは、民間企業が広大な原野や田畑をつぶして大規模な太陽光発電設備を設置し、発電した電力を全て電力会社に売るというもので、メガソーラーと呼ばれているものです。
ここには、国策会社の延長で作られた電力会社の発電事業の一部を肩代わりすることで、新しい産業分野を切り開いて大きな利益を得ようという、民間企業の目論見を見ることができます。
このような世間の太陽光発電に対して、私が実践する太陽光発電は全く異なるものです。
まず、自分の家庭が1日に消費する電力の総量を予測し、それに合わせた量の太陽光パネルと蓄電池を設置します。そして、太陽光パネルで作った電力はそのまま我が家で消費し、余れば蓄電池に貯める。発電量が消費量に足りない日は、貯めてある電力を使うというものです。
電力の消費量と発電能力・蓄電能力について検討し、正しく計画を立てれば、我が家の電力消費は我が家で作った電力ですべて賄えることになり、電力会社の電力は無用になります。電力は売りもしないし買いもしません。
また、ここで大切なことは、大量・無制限に電力を消費することが幸せであるという考え方を改め、電気エネルギーの消費の縮減を心がけて暮らすということです。
私はこのような太陽光発電設備を、海外の製品を使ってとても安く設置しました。しかしそのために、国や地方自治体からの補助金が支給されません。また、今後電力会社との間で電力の売り買いをしようとしても、これもできません。
それは、太陽光発電関係の諸制度が、官僚により特定のメーカーや工事店の利益独占のために作られ、本来の目的であるべき代替エネルギーの拡大を図るためのものになっていないからです。
太陽光発電は、戸建住宅もしくは10軒程度の集落を対象に、電力会社との関係を持たない“電力自給自足”の方向で、拡大定着を図っていくべきだと思います。
一方、メガソーラーの拡大は止めるべきであります。メガソーラーの拡大・普及は、これまでの電力供給事業の一定部分を、電力会社から特定の民間企業に置き換えるだけのもの、すなわち、その特定企業に儲けを独占させるものであって、電力が国民に対して自由化される方向に反するからです。
また、電力買取制度により発生するコストは一般消費者の電気料金に上乗せされます。そして最も重要なことは、メガソーラー設備が原発にも劣らない自然破壊を引き起こす懸念があるということです。太陽光パネルが原野や田畑を覆い尽くした光景を思い浮かべてください。多くの生物の命が根絶えていくでしょう。
メガソーラーを原発の代わりにするという主張は、国民を欺くものであって、許し難いものだと思います。
ほとんどの原発が停止している現状に対して、産業界は大量の電力供給を求めています。しかし、今ある電力規制をやめることで、各企業がコージェネを始めとするさまざまな発電システムを独自に構築し、それで賄っていけるものと思います。
今後わが国の人口は減少し、電力需要も縮減していくのですから、原発の再稼動も新たな発電所も必要ありません。
つい先ごろ、原子力規制委員会から、敦賀原発の原子炉直下の断層が活断層である可能性が高く再稼動は認めない、との方針が示されました。原発は即廃止すべきでありますが、代替エネルギーについても、その方向性を誤ってはならないと思います。