当社代表桑原によるコラム「遊自耕」は、隔月発行の建築情報誌「飛翔」誌上にて連載しています。飛翔の送付をご希望の方は、飛翔送付申込フォームよりお申込下さい。(送付無料)
私が前回のこのコラムを書いていた時、民主党は代表選を行おうとしていました。
ちょうど鳩山氏が、菅、小沢という二人の候補者を前に、「両者を協力させて挙党体制を」などと主張していたころです。
結局は両者の一騎打ちとなり、菅氏の勝利に終わりましたが、与党である民主党の代表選に、3ヶ月前に「政治と金」問題で批判を受け「市中引き廻しの上打ち首」の身であるはずの小沢・鳩山両氏が再登場し、小沢氏に従属する鳩山氏が代表選を取りまとめようとすること自体、とても理不尽なことです。
こんなことがまかり通るのは、庶民の意識が未成熟なためではないでしょうか。
参院選で民主党が敗北したことで、政治はますますマスコミの井戸端会議と化し、国会は開くに値しない演舞場となっています。
小沢氏は、検察審査会により起訴されてもまだだんまりを決め込み、民主党も分裂を恐れてか党としての見解がまとまりません。
野党は民主党批判を強め、政権交替が急務だと訴えています。
庶民は、自民党政権を民主党政権に変えたものの政治が混乱するだけで得るものはなく、早く民主党政権が終わることを望み、しかしその先に期待できるものはないと、悪態をついています。
そして多くの政治家が、「自民党も民主党もそう変るものではなく、大連合が問題解決の道」だと思っています。
その通りです。私もどっちもどっちだと思います。でも、同じような狢(むじな)たちが集まって「私も悪いがあなたはもっと悪い」と言いあっていても政治と金の問題を解決することはできません。
民主党の後は、自民党でも、両党のどちらかと小政党が連携して政党再編することでもありません。政党と政党がつるんで、どんな政権を創っても同じことです。
政治がこんな状況になっている最大の原因は、悪態をつくだけで自分を振り返らない庶民の姿勢にあるのではありませんか。
私たちが住むこの社会は資本主義経済社会であり、それはすなわち資本家のための社会です。(資本家とは、現代では、飽くなき大量生産を追求する大製造業者や、彼らを支え自らの利益を貪る金融業者たちとでも言っておきましょう。)
大量生産を続けるためには大量消費が続くことが必要ですから、資本家たちは庶民をモノとカネで惑わせ、大量消費を求めて生きることを幸せと思い込ませてきました。
その結果、近代工業社会の発展が善であり後退は悪であるとする価値観を、社会を支配する資本家と支配される庶民が共有するに至りました。
しかし、この近代工業社会は多様な種の生存を否定し、地球を生物が生きられないものにしています。
そして、「相対的に増殖しすぎた人類も当然に大きな影響を受ける。すなわち人類は自ら作った経済により滅亡の危機にさらされている」という考え方は、一部の変わり者や生物学者たちの意見として聞き流す訳にはいかないものです。
さて、こんなこととは知らないでやってきた庶民に罪はない、そう言い切れるでしょうか。
悪態をついているだけで自分を振り返らない。モノとカネの呪縛に縛られ、会社や国家にそれを求めつづける。
こんな庶民に、先の見えない政治状況や、人類の生存を脅かす経済社会を作ってきた大きな責任があります。
主犯は、政権獲得のために庶民の物欲に迎合する政治家や、物欲を掻き立てる資本家かもしれませんが、長い間彼らに乗せられてきた庶民も、立派な共犯者です。
人口が減少して社会の成長が止まり、経済が縮小していく時に、増産し、経済を拡大していく必要はありません。私たちは、すでに有り余る財物に埋もれて生きています。
60才を過ぎた人達は思い起こせば分かることですが、自分達の両親には十分な仕事はなく、それゆえ貨幣に頼らない生活をして、それでも元気に生きていました。
今、庶民一人ひとりに、自ら政治家や資本家の呪縛を解き、自分の生き方を考えることが求められています。
悪態をつくのはやめて、政治の方向を示すための庶民運動を起こしていく、自立した庶民の一人になることだと思います。