当社代表桑原によるコラム「遊自耕」は、隔月発行の建築情報誌「飛翔」誌上にて連載しています。飛翔の送付をご希望の方は、飛翔送付申込フォームよりお申込下さい。(送付無料)
世界同時不況の影響を受けて、私達の生活や会社経営に不安が広まっています。でもこんなご時勢だからこそ、わが国の景気を押さえつけているもう一つの問題、改正建築基準法について、声を上げる必要があるのではないでしょうか。世界経済は私たちの手に余る問題ですが、それに比べれば改正建築基準法の問題点は明白で、再改正すれば解決するのです。
「当初の混乱も収拾し、建築確認申請数は増加」ひと頃出されていたこんな報道に惑わされてはいけません。改正法が施行された直後の申請数と比べれば今年の申請が増えるのはあたり前で、設計実務はまだまだ混迷が続いています。
設計実務や申請に手間と時間がかかれば、設計を委託した建築主にも、設計料増額や建築用資金の借入利息の増加などの経済的負担が増えてきます。マンション・店舗・工場などは事業開始が遅れ営業損失も発生します。今までのような経済的で魅力ある建物を手に入れることも難しくなっています。
このような状況の中で、実施を中止・中断する建築事業は後を絶ちません。またこのままでは、今後も建築事業が活発になされるとは思われず、改正建築基準法はまさに重大で長期的な景気低迷要因であります 。
なお、ほとんどが零細経営の設計事務所では、建築確認申請業務にかかる人件費が増大する一方で設計業務の依頼が減って収入は激減、多くの建設会社もまた困難な経営状況に陥っていることなど、改めて言うまでもありません。
建築設計は、ライセンスを取得した建築士の権限と責任において行われています。また、建築確認という制度は、限られた時間のなかで設計に法違反がないか確認するだけのもので、審査を行う役人が建物の安全性を保証しているわけではありません。なのに、これまで役人は建築確認制度を建築許可制度のごとくに扱っており、これは建築士の設計業務に対する極めて不当な干渉です。
また、構造偽装問題に端を発した改正建築基準法制定は、この問題の本質が分からない国交省上級官僚によって深い検討もなされないまま進められ、その結果官製不況ともいうべき状況が作り出されました。
国は、中小企業支援対策として銀行融資の制限を緩めたり、補助金をばらまいたりしようとしています。このような小手先の対応は、改正建築基準法制定と同じく、これまで進められてきた行政改革を骨抜きにし、国家の方向を誤らせてしまいます。
本当の経済復興効果を得るためには、改正建築基準法のような法規制そのものをやめさせなければなりません。百害あって一利もない施策を続ける官僚・役人、彼らをコントロールできない今の政治そのものを、今年こそ改革しなければと思います。
今年も改正建築基準法再改正運動に邁進します。どうかみなさまの力をお貸し下さい。