官製談合が社会問題となっている中、2006年12月には全国知事会が「都道府県公共調達改革に関する指針」を発表するなど、各方面で公共工事改革が論じられています。しかし、それらには不十分な部分もあると感じています。これを機に、代表の桑原が実務者の立場から、「談合を根絶し、良い公共工事を安く発注するための提案」をまとめました。
ぜひご一読の上、ご意見・ご批判等をいただけましたら幸いに存じます。
なお、この提案は、全国地方自治体首長、衆参国会議員、新聞社や雑誌社などマスコミなどにお送りしています。
2006年12月18日、全国知事会が設置した公共調達システム刷新プロジェクトチームから「都道府県の公共調達改革に関する指針」が発表されました。
この指針案には、これまで私が主張してきた項目と共通するものも含まれており、一定の評価に値するものですが、なお不十分な部分も多いと思われますので、これを機に、「地方自治体が良い公共工事を安く発注するための提案」をさせていただきます。(なお、以下は、都道府県だけでなく市町村に対しても提案するものです。)
(注)入札金額の大小だけで単純に落札会社を決定することは問題であるが、より安く発注することは入札の極めて重要な要素であるので、まず「価格評価」において“安い”ことを無条件に評価すべきである。
なお、“安い”金額で工事を発注することに関して「品質確保の支障」「下請会社へのしわ寄せ」等の問題が言われているが、その解決は、ここであげた「その他項目の評価」を十分行うことの他、一定の技術力(有資格者数・経審点数等)を入札参加条件として設定すること、および施工段階での監督・検査・確認等の強化によって図るべきであって、発注段階でのより安く発注するという要素を蔑ろにするような方法(失格基準価格の設定、技術力等の減点評価など)は取るべきではない。
一般競争入札を行う工事については、入札参加会社の地域要件を発注自治体のある都道府県単位に拡大する(都道府県をいくつかの区域に分け、会社が特定の区域にあることという要件設定を行わない)。
入札参加条件としてのJVを撤廃する(ただし、請負会社側の意向によるJVでの入札参加を排除するものではない)。
(注)発注者がJV構成を要求することは、建設業界(建設業団体)内での調整を建設各社に求めることであり、談合をさせているようなものである。 また、談合(業界内での調整)を是としない会社の入札参加を拒むものであるとも言える。
(注)1、2については、入札金額の下げ止まりの要因となるものであり、より安い発注の可能性を阻害する。
3については、談合により決まる落札予定額算出の基準として使用されるものであり、談合誘発の原因であることは言を待たない。
これらの価格は、公表されていればもちろんであるが、制度上公表されなくても漏洩され、上記のような問題を生じるものである。
むしろ、このような制度自体が、発注者の建設業界(建設会社)に対する利権を生み出す源泉となるものであり、官製談合のおおもととなっている。
(注)設計変更に伴う請負金額の変更や施工途中の出来高査定においては、発注者が定める算定方法や数量・単価が、一方的に(その工事の実情と無関係に)用いられることが多い(しかも、多くの単価が請負会社に対して公表されない場合もある)。
そのため請負会社は、請負金額算出において予備費的な要素を見込むことによってそのような場合に発生する損失を担保せざるを得ないことになり、これが工事費を高くする要因になっている。
また発注者は、このような一方的な方法による請負金額変更等を実施するのと引き換えに、請負会社に対して高い利益(一般管理費)を認めているとも言える。
(注)現状においては、下請会社への支払条件の多くは長期サイトの手形払いとなっていることが多く、下請会社は工事資金借入の金利負担を強いられている。また下請会社は、元請会社の倒産による工事代金回収不能リスクも負っており、このようなことが、総工事費の70〜80%を構成する専門工事費(下請会社への支払金)が高くなる要因となっている。
また、この措置を実施することにより結果として元請会社の入札金額を低減することができると同時に、低価格入札に伴って取りざたされる「下請会社へのしわ寄せ」問題の一部を解消することができる。
入札参加資格申請書(指名願い)を各都道府県および各市町村が個別に受け付け審査することを止め、都道府県が一括して行うこととする。
(注)入札関連事務の効率化を図ると同時に、資格審査を通して生じる市町村の建設会社に対する影響力を排し、官製談合が行われる土壌をなくす。