2004年度経営基本方針
新しい建設業のために、「会社」を解体し、社員を自立させる。

「会社」を解体する

事業の方向について

当社は、3年前に新建設業宣言を行い、「建築事務所」から「新しい21世紀型建設業」に転換しました。

「新しい21世紀型建設業」は、「設計と施工を統一し、一貫して実施する」という設計重視の建設業であり、透明性と競争性の原理により「良い建築を安く実現する」ものであって、現存する建設業とは全く異なったものです。

宣言から3年が経過し、設計と施工の統一を原則とした当社の請負型CMは、顧客である建築主の評価を得て着実に実績を重ねています。

今年度はこの成果を固めるとともに、さらに飛躍をめざします。すなわち、人の物を設計し造るだけの建設業から、設計力と施工力を活用し自らの事業を行う会社に転換を図っていくことにします。

また、新しい21世紀型建設業を拡大発展させるには、「設計と施工を分離させ、施工者の自立を押さえ込んでいる、現行建設システム」の確立者であり擁護者である建築行政の実施者、すなわち官僚との、果敢な戦いを避けて通ることはできません。

▼希望社売上高・営業利益推移

会社創りについて

新しい世紀に入り、わが国の社会は、ますます混沌として先行きの見えない状況になってきています。

当社は、設立当初から、20世紀後半に確立された「企業社会」のポリシーやシステムからの脱皮を試みてきましたが、近年多くの企業が当社の歩んだ道を早足で進み、当社との差を埋めてきているようです。

今私は、「会社の収益のために社員を縛り社員を雇用するという企業論理を捨て、社員一人一人を解放していく」という視点に立った経営が必要だという想いに至っています。

2004年4月、20世紀に企業が確立した企業中心の価値観とそれに基づいた組織を、当社は解体することにします。

今後は、役員・社員を問わず、会社への依存と従属という呪縛を解いて、自立の道を歩むことを指導し支援することにします。(自立は、経済的自立と精神的自立の両方を指す。)

当社は新年度を以って、新しい生命体に脱皮し生まれ変わります。

社員を自立させる

1)賃金は下がっていきます。年金は崩壊します。

先ごろ、景気が回復してきているとの政府の発表がありました。しかし、ごく一部の業種を除けばその実態は乏しく、今後経済が順調に回復するという保証などありません。

この景気の停滞は、生き残りをかけた企業どうしの価格競争をさらに加速させます。企業の商品やサービスの価格に影響を与えるのは原価であり、原価を構成する最大の要素は社員の賃金ですので、価格競争は社員の賃金低下を招かざるを得ません。今後も引き続き賃金は下がっていきます。

賃金が低下すれば、国民が国に納める税金や社会保険料が少なくなり、国家の財政が貧窮することになります。また景気停滞は、物が売れず、十分な企業収益が確保されないことを意味します。 したがって、企業が国に納める税金も減り、ますます国家の財政は逼迫します。

一方、わが国は、高齢化、少子化の傾向がますます高まってきており、非就労者の比率が高くなってきています。 これと、国家の税収が減少することとがあいまって、勤労者の年金保険料が増える一方で、老後の年金支給額は減っていくことが確実になっています。やがては現行の年金制度自体が崩壊し、保障は自己責任型のものに変わっていくことになるでしょう。

2)会社に頼らない。国家に頼らない。

このような社会状況の中で、これまで会社に属して収入を得てきた多くの人々は、需要の拡大する社会環境の中で身につけた物質指向の価値観による消費行動を改める努力を始めています。浪費をいましめ、ローンを完済し、その上で老後のための貯蓄を心がけるのです。

その貯蓄のために、今より多くの収入を得られるよう、会社での高い地位を求める。すなわち、企業への依存と従属を強めていくのが、一般の企業に勤める社員の宿命です。

しかし、1)で述べたように、頼るべき企業の基盤は今や一変しています。また、老後の年金についても、国家は頼れる存在ではなくなりつつあります。

このような現実をよく考えれば、21世紀をたくましく生き抜くためには、企業と国家に対する幻想から目覚め、企業や国家に依存し従属する生き方を止めて自立する以外に、道はありません。

3)「世のため人のために」を誇りに働く

希望社をより大きく成長・発展させるためには、社員一人一人の「何のために会社に所属し、何のために会社で働くのか」という意識がとても重要です。

多くの企業のような、収入を得ることを主たる目的として働く者の集団ではなく、企業からの収入だけに頼らなくてもよい経済的・精神的基盤を持ち、理念の実現のために集まった者で、会社を構成し運営する。そのことが、小さい生産コストで、顧客に喜ばれる安い価格で、サービスや商品を提供することを可能にさせます。

〔「会社」を解体し社員を自立させる〕ことは、このような会社創りを進める上で極めて重要であり効果的なことであると思います。また、〔「会社」を解体し社員を自立させる〕という経営方針の実践は、当社の発展のためのキーワードに留まらず、21世紀に生き残ろうとする多くの企業にとって、ローコスト・低価格の経営という新たな実験のテーマとなるでしょう。この実践が少数企業の枠を越えて拡大していくと、20世紀型企業社会が解体され、国家も再生されます。  当社は、その先導者となることにより、新たな存在意義を示すことができると考えています。

4)自立の型と個人の働き方(概念)

自立は、経済性と精神性の両面で実現しなければ持続できません。

また、個人の選択により、退職して自立する型と、在職しながら自立する型があります。

いずれの場合も、もっぱら賃金(収入)を増やすことを目的に生きるのではないことが、前提となります。

ここでは、自立の各型について、働き方の概念を述べておきます。

1.退職して自立する

主として経済的欲求を満たすために働くことになると思いますが、その際にも、自分の提供する商品やサービスは誰のものであるかを自覚することが大切です。ただ欲をかくだけでは、今ある多くの企業と変わりはなく、即行き詰ってしまいます。

自立のためには、希望社の理念を根幹にした事業展開が必要であります。(そのために当社は、計画的な研修の場を設け、自立者の人格と経営についての学習を支援します。)

2.在職しながら自立する

世のため人のために役立つことを目的に起業した希望社の社員であることに誇りを持って働くことになります。

世間にあるあらゆる企業に比べて、固定費が小さく競争力のある会社の運営に参画していきます。

賃金という企業の鎖を完全に断ち切り、希望社の掲げる理念の実現を自らの生き方として、その役割を負っていくことになります。

(「自己の金銭的欲求」と「会社で行う業務の社会的役割に対する誇り」との結合については、今後分かるように提起していくことにします。)

5)会社が自立を支援する

社員の自立は、会社が指導し実現させます。今まで続いた企業社会の常識と慣習により、社員自身が自主的に自立することは困難だからです。社員の自立は、会社の支援によってのみ成し得るものだと思います。

自立の方法は個人の判断により選択することになります。その選択は、社会の変化を学び、理解し、その上でなされる「この変化の中でどう生きるのかという自問自答」を前提に行なうべきものであります。

金銭的欲求を高めながら自立するのか、物質的願望を抑えた生き方を指向する中で自立するのかは、個人の価値観によると思いますが、今年度は、金銭的欲求を高めながら自立をめざす社員を支援することを中心にします。

何をどうするかは多様だと思いますが、当社は建築に関する業務を行っている企業なので、「収益確保を目的とする事業用マンション事業」の活用を重点に具体化することにします。

▼役員・社員の事業用マンション例

6)社員の自立を促す、当面の経営上の諸対策

1.現行の評価制度の維持

成果主義的色合いの強い当社の評価制度とそれによる賃金昇降額の決定の仕組みは存続させます。

この仕組みは、毎年改善を図っていきます。さしあたり、評価は半期毎に行い、1回の昇降の幅を±30,000円に変更します。

2.会社の利益確保の優先

社員の賃金の増減で会社の利益が変動する現在の状況は、当社が確立してきた新賃金方式の考え方にそぐわないので、会社の利益確保の優先を改めて徹底します。

具体的方策として、年度毎に決算をし、その年度の営業利益額(実績)と予定営業利益額との差額(過不足額)を、次年度のコアスタッフ(新入社員および試用社員は除く)の賃金で増減処理します。すなわち

  • 予定営業利益率は、各部門の運営計画と無関係に、請負型CM事業で3.5%、その他事業で10%とする。予定営業利益額とは、売上実績に予定営業利益率を乗じた額とする。
  • 決算にあたり、自社が継続して活用している建物の売却によるものは、損益の計算に加えない。
  • 年度の営業利益額(実績)と予定営業利益額との差額(過不足額)を、次年度に引き続き勤務するコアスタッフ(試用社員は除く)の人数で割り、さらに12(ヶ月)で割って「月次利益分配額(控除額)」を算出する。但し、この月次利益分配額は±30,000円/月を限度とする。
  • 次年度に引き続き勤務するコアスタッフの次年度の賃金は、現行の評価制度により決定する各コアスタッフの月次賃金に、一律に月次の「利益分配額(控除額)」を加えて(もしくは控除して)支給する。
  • 次年度途中に退職する(コアスタッフでなくなる)者に対しては、退職時の未払い賃金は、次年度のうちの残りの月数に月次の利益分配額(控除額)を掛けた金額を加え(または控除して)支給する。

3.社宅・社員寮の家賃システムの改訂

社宅・社員寮という名の低家賃住宅による、社員と会社の従属関係を順次解消していきます。 即ち、現在社宅・社員寮に入居している社員に対して、2005年4月から家賃を2,000円/月引き上げます。また、その後も1年を経過する毎に一度、2,000円/月の引き上げを行い、一般入居者と同額になるまで引き上げを継続します。

また、2004年4月以降に社宅・社員寮に新たに入居する社員に対しては、入居後1年以上を経過した4月からで、家賃を2,000円/月引き上げます。また、その後も1年を経過する毎に一度、2,000円/月の引き上げを行い、一般入居者と同額になるまで引き上げを継続します。

4.〔「会社」を解体し社員を自立させる〕全社員研修の実施

「会社」を解体し社員を自立させるためには、全社員が当社の理念と行動指針を実践的に身につけることが大切です。

年間を通して、全社員研修を実施します。

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