当社代表桑原によるコラム「遊自耕」は、隔月発行の建築情報誌「飛翔」誌上にて連載しています。飛翔の送付をご希望の方は、飛翔送付申込フォームよりお申込下さい。(送付無料)
社員の一人一人が半期ごとに自分の目標を立て、期末に目標達成度を自己評価し、その評価の結果によってダイレクトに次期の賃金が昇降する。当社はこれを「自己評価制度」と呼び、1999年度から実施してきました。
この制度を始めた当初は、会社の利益確保に自分がどう貢献したのかを評価するのだという視点がありました。また、自分で目標を立てその達成に向かって努力し、結果が出れば賃金が上がり出なければ下がるという仕組みに、社員の自主性に基づいて会社の業績向上を図ることができるという期待を持っていました。
ところがどうでしょう。2006年度の営業利益は予定していた額から約4,800万円も不足してしまったのに、2006年度の下期の多くの社員の自己評価は昇給を求める結果となってしまいました。
もともと、会社の業績(利益)と個人の業務目標を結びつけることは、とても難しいことです。特に管理(事務)業務では、直接数字で業務の成果を表すことはできません。加えて、利益以外の要素、例えば「社会の為に役立つ仕事の仕方をしているか」「組織の中で信頼されているか」「部下をよく指導しているか」といった要素でも評価すべきではないかというような意見が出て、目標の立て方や内容が変わっていきました。
その結果、一生懸命働いた、他者より長時間過密に働いたといった、あいまいで主観的な評価が昇給につながるような制度になってしまっていたのです。
一方で当社は、利益を確保するための「新賃金方式」を実施してきました。会社が予定利益を上回る業績を上げられれば、その上回った分を次期の賃金原資(コアスタッフの賃金の総額)に加え、下回ればその分を次期の賃金原資から減らす(回収する)。これを「自己評価制度」による賃金の昇降とあわせて行ってきたのです。
このやり方でいけば、社員の2007年度上期の賃金は、「自己評価制度」によって一旦多くの昇給を認めたうえで、「新賃金方式」によって大幅な減額をするということになります。しかし、こんなことをやっていてよいのか、根本的に検討すべきではないかとの思いから、今期の社員の賃金の決定は、「自己評価制度」にも「新賃金方式」にもよらない特例措置を取りました(賃金原資の増減はせず、自己評価ではなく本部長の判断によって個人の昇降給を決定)。
当初の思いから外れてしまった「自己評価制度」の、何を継承し、何を切り捨て、どう改めるのか。6月から評価制度検討委員会で協議を行い、10月からの新しい現実的な制度実現を目指しています。
自己評価制度に、自分の賃金の昇降を決めるという役割を持たせることをやめます。会社の利益の実態とそれに関わっている個の関係が分からない社員たちに自らの賃金の昇降を決めさせる、こんな不可能を求めることはできません。
この制度は、指示・命令がなければ働けない社員を一掃し、企業理念に基づき自ら働く社員集団を作るための重要な仕組みにしたい。目標の内容は、会社の業績(利益)にいくら貢献したかという視点だけでなく、人間的成長・企業理念の実践など幅広い視点に立ったものにします。
なお、社員の賃金昇降は自己評価とは無関係に決められることになります。賃金と業績との連動を徹底したこれまでの「新賃金方式」をより現実的に運用して賃金原資の増減を決定したうえで、役員会の判断でそれを各本部に分配し、本部長の判断で各グループに分配し、グループリーダーの判断で各グループのメンバーに分配する……。またまた多くの社員の疑問と不満が渦巻き、役員・本部長・グループリーダーの判断力がよりいっそう問われることになるでしょう。