当社代表桑原によるコラム「遊自耕」は、隔月発行の建築情報誌「飛翔」誌上にて連載しています。飛翔の送付をご希望の方は、飛翔送付申込フォームよりお申込下さい。(送付無料)
バブルが崩壊し、景気の停滞が長期化して、日本経済再生のために規制緩和と民間の自由競争が叫ばれていた時期がありました。
ところが何時からか、世にさまざまな不正・偽装・疑惑が相次いだために、猫も杓子もコンプライアンスと騒ぎ出し、一方で、それらの防止策と称していくつもの法律・制度が作られたり変えられたりして、規制緩和や自由競争とは反対の流れができています。この流れは、言い換えれば、市民の自由活動に対する官僚統制の強化です。
さて、世間の重大な関心事である年金問題は、どこかで区切りを付けてチョンという訳にはいきそうもありません。諸悪の根源は役人であり、役人の一匹二匹の首を切ったところで始まらないということが理解され、官僚体制の解体がやっと語られ始めています。
不正・偽装・疑惑に、官僚による規制をもって対応するのは大間違い、逆に、官僚支配の息の根を止めることこそが正解ではないでしょうか。
我が業界も大変です。姉歯の構造偽装事件に関連して、無責任な官僚の責任逃れを目的に建築基準法と建築士法が改悪され、本年6月20日をもって施行されました。
建築工事に着手するには、確認申請という手続きが必要です。建築主事という役人に確認申請をすると、これまでは受理されてから21日以内に審査がなされることになっていました。それがこの改悪で審査期間は35日となり、さらに、大雑把に言って高さが20mを超える建物では70日まで延長できるようになってしまいました。
また、着工後に設計変更をする場合、これまでは変更申請という簡易な手続きでよかったのに、新たに確認申請をし直さなければならないというケースが相当増えてしまいました。
建築主は、設計者や施工者から、官僚統制による負の遺産を負わされることになります。それは長い時間と高い工事費であります。しかも、こんな法改悪は何の解決にもならず、知識も技術も無い、訳の分からない役人が手続きだけを複雑化したに過ぎません。
労務対策や景気浮揚のために税金の分配は必要だ。こんな考えの人達もまだいるのでしょうが、民意の大勢はもはやそうではありません。
一方、昔ながらの談合は不可能になりつつあります。談合は建設業者が競争を回避して高額な受注を順番に実現していくシステムです。こんな茶番が情報化社会で継続できるわけがありません。
しかし、重要なのは、独禁法や談合罪に抵触しない方法で同様な結果を導くことは、いくらでもできるということです。一般競争入札や電子入札を取り入れても、従来の極道まがいの談合廃止効果はあるものの、高い工事費を継続する道を絶つことはできません。
言えばきりがありませんが、官僚による高い工事費を維持する仕組みが、手付かずで残っているのです。
安心できる良い建築を安く実現することを国民から委託されている役人は、善意の国民を手玉にとり、利得を手にするシステムを長期間かけて確立してきました。天下りや収賄と結びついた工事費の高額維持。それは談合崩壊後も手付かずで温存されています。
だからみなさん!建設業者の談合などを問題にしているヒマがあるのなら、その前に、あきれた役人の仕事ぶりや利得行為を徹底して追及すべきではありませんか。
継続した国民世論の構築なくして、経済の安定的な発展や私達の豊かな暮らしなど望むべくもありません。官僚支配を打倒する国民一揆の炎を大きくしていきましょう。