遊自耕76号

不常識を食らえ

希望社は昨年夏から約1年間、佐賀市でCM(コンストラクション・マネジメント)業務を、岐阜市で(株)丸泰とJVを組んで請負工事を経験しました。今回は、これらの業務で起きたことの一部を紹介し、不常識のすすめを試みることにします。

公共工事でもCMは可能です

佐賀市は、発注を透明・公正・競争的に改革するため、また設計されたものをそのまま造らず、品質を改善し、同時に無駄と過剰を取り除いて建設コストを縮減するために、CMを導入しました。

佐賀市はまず、随意契約で当社とCM契約を結び、目的達成のために、今まで行政マンが行なっていた業務を含めた多様な業務を当社に委託しました。また、一般的な入札(最低金額を提示した会社に発注する)方式ではなく随意契約(市が選定した特定の会社に発注する方法)で元請会社と請負契約をすることを決定しました。

当社はCM契約に基づき、多くの総合建設会社、専門工事会社と折衝し、元請・下請それぞれの会社を内定して佐賀市に推薦。それにもとづいて佐賀市は元請会社を決定して請負契約を結び、元請会社は当社が推薦した専門工事会社と下請契約を結びました。

公共工事でもVE(バリューエンジニアリング)は可能です。

当社の実施するVE活動は、工事に携わる建築技術者が持っている知識と経験を発注者のために提供し、建築の品質とコストを改善するものです。改善提案者にコスト低減額の何パーセントかを還元することで、より多くの技術者の参加を得、大きな成果をもたらします。

当社は、佐賀市でこのVE活動を実施し、他の業務の効果とあわせ約3,000万円のコスト縮減に貢献しました。岐阜市ではVE活動は認められなかったため、独自に約800万円の設計変更提案をして財政支出縮減に役立とうとしましたが、ほとんど採用されませんでした。真面目に取り組めば2.3%くらいのコスト改善がなされたのに残念です。

設計変更による請負代金変更方法を正す

工事が終了し、工事中実施された設計変更による請負代金変更(増減精算)協議が行なわれました。

増減金額は、原請負契約に記載されている部材等の数量変更については、入札時に元請会社が提示した見積内訳書の金額(単価)を基に算出し、原請負契約に記載されていない新たな部材等の追加については、元請会社が提出する見積金額(単価)を基に、市と元請会社が協議して決定する。これが佐賀市で実施した方法です。(当社は監理業務の一つとして、元請会社との協議を行ないました。)

ところが岐阜市では、市とJVとの協議は成立しませんでした。当JVは、佐賀市で行なった方法による精算を主張しましたが、市はそれを否定しました。その一例を挙げます。

原設計には可動テント工事があり、それが設計変更で取り止めとなりました。JVは、契約時に提出した見積内訳書に記載した135万円の減額を主張したのに対し、市は、283万円の減額と言います。金額の根拠は、市の予定価格×JVの落札率(76.3%)だそうです。

JVの工事費の総額が市の予定価格の76.3%であっても、JVは工事費を構成する各項目をすべて同じ比率で調達するわけではありません。専門工事によって、また個々の建材によって、その比率は大きく異なっており、JVは可動テントを135万円(予定価格の約36%)で見積もったから工事総額3億4千万円で請負うことができたのです。なのに、これが公共建築における増減精算のルールだと言うのです。

この見解には何の合理性も合法性もないので、これを改めるよう争うことにしました。近々建設中央工事紛争審査会に仲裁を申請するつもりです。

官僚機構改革は市民の手で

今回は佐賀市と岐阜市の対応の違いを紹介しました。地方自治法の制約と称して、多くの自治体が公共工事を2割前後高く発注し続けています。また金額だけでなく、公共工事の性格を不透明・不公正・非競争的にしています。

そんな中で、佐賀市の取り組みは、市民の利益を最優先にする改革志向の市長と職員達の新たな挑戦でありました。

振り向いてしか仕事ができず、明日に向かっての思考ができない官僚達が、多くの首長の改革を阻んでいます。こんな官僚達が御身大切にする官僚機構を打ち壊さない限り、地方分権など不可能です。"権限や財源を地方へ"など空恐ろしいことと言わざるを得ません。多くの市民(納税者)が怒りの声をあげる時です。

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