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創業者桑原によるコラム「遊自耕」は、隔月発行の建築情報誌「飛翔」誌上にて連載しています。飛翔の送付をご希望の方は、飛翔送付申込フォームよりお申込下さい。(送付無料)
人間は、原始の時代から、生きるため、飢えから逃れるために、他者を殺しても自己のための財物を蓄積することを、当然のことと信じています。欲望と、それを満たすための殺戮は、人間の性(さが)としてDNAの中に生き続けているのです。
ホモサピエンスから始まる人類は、自らの生命を守るために集団で生きてきました。集団の指導者(ボス)は、他の者たちを率いて狩猟を行い、他の集団との間で争いが起きれば、強い集団は弱い集団を攻め殺す。そうして勝ち残っていった集団のなかの、わずかな数の指導者たちが、支配される人々が生産した財物を収奪し、その財をもって軍隊を組織して、さらに力による集団の拡大を図る。このようなことが繰り返され、国家が形成されていきました。
国家権力を手中に収めた権力者たちは、より多く財物を得るために、自国内だけでなく他国にまで勢力を伸ばそうとします。人間の欲望が、今でも経済成長という名のもとに紛争や戦争を起こし、何の関係もない多くの人々の命を奪っています。 このような殺戮行為は、国家の実権を握る指導者(富者)の欲望のみにより成されるものではなく、その富者に支配された者(貧者)もまた、富者の口車に乗せられて進んで人殺しをやってのけていると思えてなりません。
30年間中小企業を経営し、それを通して見えてきたことがあります。労働者は、無意識のうちに、会社や国家に頼って生きています。具体的には、まず、会社から得る金であり休みです。
そして、端的に言うと、正社員は‘自分はパートやアルバイトとは別’という特権意識を持ちながら、また、他を陥れても己が良ければと思いながら、働いているのであります。自分が経営者に搾取されていることさえわからず、自分の賃金を同僚と比較して、多い少ないと喜んだり不満を持ったりしています。
わが国は今、民主主義が侵され、自由が制限されたり、軍事大国化が進められたりしています。多数の国民の意志に背いて、原発再稼働が進められています。それなのに、彼ら労働者のほとんどは、安倍や麻生のめちゃくちゃな政権運営に怒りもせず、サッカーのワールドカップにうつつをぬかしています。こんな人たちが増殖していったら、いつ戦争に巻き込まれるか分かったものではありません。
第2次世界大戦では、日本人300万人、世界では8,000万人もの命が奪われたというのに、自分の幸せだけを考えて「金と休日は多ければ多いほど良い」と言い、人の幸せを大切にしようともしません。
人類創生からの価値観だから仕方がないのでしょうか。利己的で貪欲な人間の性は何ともならないものでしょうか?
50年ほど前、私たちは、資本主義が良いのか社会主義が良いのか論争していました。が、今はそんな論争はほとんどありません。今振り返ってみると、二者択一の体制選択には何の意味もありません。封建制社会という母体から生まれた兄弟論争は、何も解決せず、不要過剰な生産を生じさせただけであります。
私たちは今後どう生きたらよいのか? 希望社という実験牧場の実験を経て得た、新たな実験のテーマは、国家や会社を批判することも依存することもそこそこにして、自分たちが生きるための共同体を確立する構想であります。今までの経営者や労働者の持つポリシーを否定し、多数の労働者の中から‘欲望が殺戮を生む’ことを理解して行動する少数のリーダーを育て上げ、その人たちのリーダーシップによって運営される生産共同体構想であります。
複数のリーダーが中心となって経営方針を作り、労働者と一緒に生産し、協議により共同体全体を配慮して利益を分配する。今後は、こんな困難な実験がスタートします。