当社代表桑原によるコラム「遊自耕」は、隔月発行の建築情報誌「飛翔」誌上にて連載しています。飛翔の送付をご希望の方は、飛翔送付申込フォームよりお申込下さい。(送付無料)

遊自耕 不常識を食らう シリーズno.144

あきらめない

あきらめる?

談合をなくす闘いを当社が始めて、27年が過ぎました。

公共工事では、談合は官僚が立案し、その官僚の意図に操られた建設業者が実施者として立ち振る舞います。

岐阜市は、談合に反対する当社を、6年間にわたって公共工事入札から排除しました。そこで当社は、2007年に市を提訴し、3年後に高裁で全面勝訴を勝ち取りました。そして、このような当社の行動により、岐阜市が発注する建築工事の一般競争入札の落札率が平均15%下がり、税金の無駄遣いが制限されました。

しかし、この成果は2年しか続かず、落札率はまた高い水準に戻ってしまったのです。

それは、市が、安く入札すると失格する仕組みを導入し、その基準金額を毎年引き上げてとても高くしたからです。また、特定の会社しか大きな加算点の得られない総合評価制度を推進したからです。

これらにより、当社のように過大な利益を求めず安く応札する会社は、ほとんど落札できない状況が作り出され、実質的に入札から排除されてしまいました。

このような動向は、強大な官僚機構(具体的には、中央省庁の官僚が主導する中央公契連という組織)による全国的なものであります。

四半世紀をかけて少しずつ実践してきた改革が思うように実現せず、今私は悩みの中にあります。どうしたら、奪われたものを市民のために取り戻せるか、打つ手を失っています。

あきらめることはない

今の政治や経済の動きを、企業経営、マスコミ報道、人々の暮らしぶりなどから見ていると、とても考えさせられるものがあります。

例えば、経済政策の具体策も示せず、目標値を並べるだけで人々の暮らしの改善について何も示せず、アベノミクスの果実などと空虚なことを一方的にまくし立てている安倍内閣に対して、広範で強烈な批判がなされています。

それなのに、内閣支持率は高止まりし、今のところ政権交代する気配はみじんもありません。

このような現状からすれば、自分が建築分野で取り組んできた改革が結実しないなど当然のこと。あきらめることなく、自分の力量に応じて歩み続けなければと、気持ちを新たにしています。

あきらめない

安倍内閣が推進する経済成長政策は遠からず破綻し、中小零細建設業は大打撃を受けることになります。公共工事に依存し、不透明・競争回避・業界本位で生きてきた20世紀型建設業の体質をそのままにして、建設業は生存できません。

専ら自社の利益の拡大だけを求めて、どんな顧客かも選ばず、軍事産業も核開発も環境破壊も、何でも儲かるものならそれらの下請も含めて受注する、そんな建設業で良いのか、自問自答してかからなければなりません。

日本の経済は縮小していく、その中で、中小零細業者は、少数の人材、少量の施工と少額の利益で、誇りうる仕事を選んで取り組んでいくことが大切だと思います。

当社は、現在協力関係にある小規模ゼネコンや、長期にわたり協業してきたサブコンとの信頼関係を強くして、困難を乗り越えていきます。

また、私たちをご理解いただける建築主との繋がりが私たちの生きる道だと信じて、良いもの安いものを提供していきます。

あきらめないでやり続けることが、次世代への足がかりになると思います。(四十八)

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