当社代表桑原によるコラム「遊自耕」は、隔月発行の建築情報誌「飛翔」誌上にて連載しています。飛翔の送付をご希望の方は、飛翔送付申込フォームよりお申込下さい。(送付無料)

遊自耕98号

住宅を造る

住宅は建築のルーツ

住宅は、この世に最も古くからある建築物です。原始の時代の竪穴住居に始まった住宅は、生物の繁殖のための「巣」としての役割に、安全性・快適性・見栄えなどさまざまな要素が加えられ、今日まで発展してきました。

しかし、住宅が企業によってあたりまえに造られるようになったのは、戦後しばらくしてからで、せいぜい60年くらいの歴史しかありません。住宅は長い間、「結い」などとよばれる制度のなかで部落の住民が力を合わせ、棟梁の指導のもとに造られてきたのです。また、大災害や戦災の後では、木端や草木を使って家族だけで造られたりもしています。

住宅を造ることは、人間が生きるための共同作業に他ならず、決して儲けを得るためのものではなかったのです。

住宅はやらないゼネコン

終戦後の焦土のなかで、ゼネコンは道や橋や庁舎や学校を造り、国の復興に大きな役割を果たしました。しかし、今日に至るまで、大部分のゼネコンは住宅(個人住宅)を造ってきませんでした。彼らは、住宅を手がける建設会社を「住宅屋」と呼んで専門工事業の一つのように扱い、自分たちと区別しています。

ゼネコンは、歴史的には、その時代その時代の権力者のために奉仕する、身分の低い職人集団ですから、一般庶民の住宅建築は業務の対象にならなかったのでしょう。戦後の経済・産業の発展に伴って、大型の民間工事は数多く請け負っていますが、基本的には公共工事にすがり付いて生きています。

ゼネコンは、建築の目的や、建築費の調達についての建築主の悩みなどには一切興味を持たない、ただただ大きな富(金銭)の動くところに集まる金鉱堀りのようなものです。ですから、一般の住宅は規模が小さくて金にならない、大金持ちの大型で贅沢な住宅は手間ばかりかかり大変だ、といって、近寄ろうとしないのです。

新たな時代の住宅提供者

ゼネコンが手がけなかった住宅造りの役割を担ったのは、住宅メーカーと呼ばれる企業です。住宅メーカーは、住宅に特化して業務に取り組んできた結果、伝統的なゼネコンには真似のできない業態を確立しています。

デザイン、機能性、安全性などとても優れていますし、品質も平均化され安定したものが提供されています。住宅メーカーの造るものは多くの人々に受け入れられ、大和ハウスや積水化学などは、今では大手建設会社と肩を並べる売上げを誇る大企業に成長しています。

住宅メーカーが存在しなければ、社会の発展に応える住宅の量的拡大はできなかったでしょうし、住宅の品質の改善と安定は図られなかったと思います。しかし、住宅メーカーの造る住宅の規模・内容や価格は一様に固定化され、一定以上の所得のない多くの庶民にとってはまだまだ高嶺の花です。

近頃、住宅の価格破壊者とも見られるタマホームなどのメーカーが急成長を遂げています。これを見ても、住宅を手に入れたいと願う人達にとって、価格の安さは極めて重要な要素であることはまちがいありません。ただ、タマホームの住宅の機能・品質と価格とのバランスついては、それを取得した人達の中にも、賛否両論があるようですが……。

住宅造りに本気で取り組む

希望社は創業時から、現代の棟梁を目指すという理想を掲げ、他の設計者や施工者と一線を画してきました。また、初期には「夢相談所開きました」というパンフレットを作り、主として住宅を手がけていくつもりでした。ところが、実績のない私達に住宅を依頼してくる建主は少なく、依頼されても収益があがらず、ついつい片手間にしてきました。

希望社は創業20年を迎え、もう一度本格的に住宅に取り組んでいきます。住宅は、富める者にも貧しい者にも等しく必要なものですので、私たちはより多くの人々が手に入れられるように、建主の状況や要望に合わせて住宅を造ります。

贅沢なもの、質素なもの。合理的なもの、そう合理的でないもの。私たちは、建て主の考え方一つでさまざまな住宅を実現します。大きな敷地を手に入れることが困難な都市部でも、狭小な敷地に一つ一つ違ったあなただけの住宅をあなたと共に実現していきます。

希望社は現代の棟梁として技を研いていきます。

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