遊自耕72号

行革、頑張って下さい市長さん

市長の回答は公共建築室の見解と瓜二つ

「役人の常識は常識人の非常識」岐阜市発注のコミュニティセンター新築工事をめぐって、前号のこのコーナーでお伝えした問題点について、新たな展開がありました。

昨年の12月16日、当共同企業体(以下JVという)は発注者である細江岐阜市長宛ての要望書を提出しました。それまで2度にわたり、JVは市の工事監理部署である公共建築室に対して「スラブ(床)の型枠工事の材料にフラットデッキ(金属板)を使用したい」という申請をしていましたが、「一部箇所について使用を認めない」という返答しかなされなかったため、請負契約上の問題としてその判断の撤回を求めたのです。

しかしその回答は、公共建築室が作成したものに押印しただけとしか思えないものでした。

フラットデッキの使用不承諾は契約違反

市とJVとの工事請負契約約款第1条第3項には、「施工方法等については、この契約及び設計図書に特別の定めがある場合を除き、乙(請負者)がその責任において定める。」とあります。

これに対して市は、「『フラットデッキでは水漏れ・雨漏れがあった場合に補修が困難になること、結露により錆汁が発生する恐れがあること』から、共通仕様書6.9.3材料(a)(2)(『型枠の材料は所要の品質を確保できるものとし、監督職員の承諾を受ける』という規定)により不承諾の判断は妥当である。」と回答しています。

一見妥当な見解であるかに見えますが、この規定でいう「所要の品質」とは「コンクリート部材の位置及び断面寸法の許容差」と「コンクリート表面の仕上状態」に関するものであり、「補修」や「錆汁」についてのものではありません。であるのに、市はこれを勝手に拡大解釈し、規定にない事項(基準)をもって所要の品質を確保できないと言っているのです。これを許せば、監督職員の主観で判断することを認めることになってしまいます。

念のため付け加えておくと、この建物では水漏れ・雨漏れの恐れはなく補修を考える必要はないし、錆汁が出る恐れもありません。また、もし本当にそのような心配があるのなら、設計図書に指示されているはずの事項です。しかし、設計図書にはフラットデッキ使用については何も書かれていません。

つまり、市が行った不承諾の判断はその根拠がなく、根拠がない以上契約に違反するのです。  工期を守るため、JVは市の指示に従って合板型枠を使用することにしました。しかし市の見解を受け入れることはできませんので、中央建設工事紛争審査会という機関にJVと市の間の紛争解決のための仲裁申請をし、疑義を明確にしようとしています。

監督職員の職務は正常とは言い難い

JVはまた、監督職員の職務執行が著しく不適当であるとして、契約約款に基づいて市長に「必要な措置」を求めました。

その理由の一つが、「JVから提出する質疑に対する回答が著しく遅く、工事の進捗に支障をきたしている」ということです。これに対して市は、そのような事実はない、したがって(必要な措置を)請求する理由がないと回答してきました。

昨年11月まで、質疑について明確な回答がなされなかったことが頻繁にあったことは前号でも書きました。そのため、JVは公共建築室に改善を求めたのですが、その結果、ある程度の案件で2〜3日で回答がなされるようになってきていることは事実です。

しかし、理由は定かでないのですが、昨年の10月21日に承認願いを出しているにもかかわらず、2月25日現在に至っても回答がない案件があるのです。それは、JVが発注を決めた金属屋根工事業者の承認です。

金属屋根工事業者が決まらないと、屋根下地となる鉄骨の製作に影響が出て、工事の進捗に支障をきたす。これくらいの判断は市の監督職員でも分かるはずです。

今後どんな見解が示されるのか分かりませんが、とても正常な職務執行状況とは言えません。下請工事業者の選定に市職員の不明瞭な関わりが有るのでは?それも含めて明確にしていくことにします。

民間出身の市長にエールを送る

JVは市長に、公共建築室の職員の業務に対する姿勢ややり方に多くの問題があることを伝えました。が、今回は残念ながら、市長はこれを検討されないまま、回答されたようです。

公共事業や行政事務のコスト削減を目指す行政改革は、避けては通れない重要な問題です。そしてこの問題は、長い歴史の中で定着した官僚体制との果敢な戦いなくしては、解決できません。

岐阜市は、過去50年以上にわたって市役所出身者が市長を務めてきました。官僚の申し送りでなされてきた市政の改革を求める市民の期待によって、細江市長は誕生したと思っています。民間出身の市長なら、保身と建前の横行する官僚の実態は分かるはずです。

JVは、余計なお世話かもしれませんが、民の立場から官に向かって意見を出しています。民間会社の経営者であれば、自社の発展のために、寄せられる不満や苦情は重要視し、決して曖昧にはしません。

細江市長には、ぜひともその役割を負っていただきたい。サンチョ・パンサだけを家来に持つドンキホーテにならないよう、エールを送ります。改革は、自分の足元からではないでしょうか。