当社代表桑原によるコラム「遊自耕」は、隔月発行の建築情報誌「飛翔」誌上にて連載しています。飛翔の送付をご希望の方は、飛翔送付申込フォームよりお申込下さい。(送付無料)

遊自耕 不常識を食らう シリーズno.142

希望社は公共工事に再登場します

打首になった希望社

公共工事を受注しようとする建設業者は、年に1度、国交省に経審(経営事項審査)の申請を行わなければならず、完工高や技術者(有資格者)の人数等に応じて総合評定点がつけられることになっています。

当社は、一昨年度まで、毎年20名程度の有資格者を申請し認められていましたが、昨年度は同様の申請を行ったにも関わらず1名しか認められませんでした。

当社は毎年度末に、社員の働く意思を確認したうえで、社員との間で翌1年間の労働契約を締結しています。この制度が、「技術評価の対象は、雇用期間を特に限定することなく常時雇用されている者」という通達記載の条件に反するために、社長以外の技術者は失格となったのです。

当社は、多くの会社と異なる制度をたくさん持っています。定年制はなく、本人の意思に従って働くことができます。いわんや、1年で雇用を打ち切るなどという制度はありません。しかし、国交省はこれを認めませんでした。

本文(飛翔152号)で紹介したとおり、これにより当社は公共工事から排除されてしまいました。以前は、岐阜県・岐阜市では工事規模(予定価格)の大小に関係なくほとんどの入札に参加できていたものが、評定点が下げられたために、概ね予定価格2500万円以上の工事の入札に参加できなくなりました。建設業者としては、打首にあったと同様であります。

公共職員の中に光を見た

今年度の経審申請では、制度としても実態としても有期雇用ではないことを、理由書や資料を添付して詳しく説明しましたが、「昨年と同様」との連絡を受けました。

書類審査では埒が明かないので、私は、国交省中部地方整備局建設産業課に出向き、詳しく説明し理解を求めました。しかし、「本庁と違う判断はできない」と言われたため、「本庁に実態を伝えて理解を得てもらえませんか。それでも駄目なときは、私が直接本庁と話ができるよう繋いでください」と依頼したところ、これを引き受けてくれました。

しかし半月後、「本庁とやりとりしたが、やはり通達どおりにとのことで、申請の技術者を評価することはできない」との連絡を受けたため、「『通達どおり』では何もわからない。当社の何をどう変えたら良いのか」と、再度建設産業課を訪ねました。

実務職員は相変わらず「本庁が駄目だから駄目」でしたが、上職の課長は「技術者の労働契約書の雇用期間の記載を削除してもらえば良い」「昨年話し合えれば良かったですね。申し訳ないことをしました」。公共職員は通達一辺倒だと決めてかかっていた見方を反省する体験をしました。

これで当社の首はまた繋がり、今後の公共工事入札では工事規模の制限を受けずに参入する道が回復しました。

公共工事費引き下げの闘いを続ける

当社はかつて、恣意的な入札排除を行ってきたとして岐阜市を提訴し、高裁で全面勝訴しました。このような当社の姿勢は、2009〜2010年度における岐阜市建築工事の一般競争入札の平均落札率を、15%も引き下げる役割を果たしました。

しかしその後、本誌で何度も紹介してきたとおり、毎年最低制限価格が引き上げられ、当社は低い金額で入札すると失格してしまいます。

また、最低制限価格に近い失格しない金額で入札しても、総合評価制度による加点が少ない当社は、なかなか落札できません。総合評価項目には、技術力や財務力とは関係ない恣意的な項目がたくさんあり、特定の会社に落札させる仕組みになっているからです。

このように、入札からの実質的な希望社外しがなされてきた結果、平均落札率は2013年度から90%を超えるようになり、談合時代の高い水準に逆戻りしてしまっています。

納税者のために公共工事費を引き下げ、財政支出を少なくする試みは、絶えず引き戻され続けています。やってもやっても終わりの見えない闘いですが、あきらめずに続けていくことにします。     (四十八)

遊自耕141に戻る

遊自耕143号を見る