当社代表桑原によるコラム「遊自耕」は、隔月発行の建築情報誌「飛翔」誌上にて連載しています。飛翔の送付をご希望の方は、飛翔送付申込フォームよりお申込下さい。(送付無料)

遊自耕 不常識を食らう シリーズno.141

めざすは無血革命

富める者だけが富む

フランス革命、ロシア革命は、大量の血を流して絶対王政を打倒しました。そのロシア革命から約1世紀、資本主義国と社会主義国の対立を経て、私たちは現代を迎えています。

現代は、世界各地で国家的、民族的、宗教的紛争が広がり、戦乱状況の中で命さえも危うい人々が大勢いる一方で、資本主義経済体制を基本にして、物欲だけを追い求める多くの人々であふれかえっています。

そして、この現代資本主義は、実業を持って富を得るのではなく、貨幣を持って金融資産を売り買いして利潤を稼ぐ、金融資本主義の段階に到達しています。このような、何の富も生まない博打の経済が、長く続く訳がありません。

この社会にあっては、ほんの少数の者が圧倒的な貨幣を手に入れ、大多数の者は目先の物欲にさいなまれながら、貧者として暮らしています。1975年から始まった先進国首脳会議も、本質的問題を検討する場ではないので、この状況は何の解決もされないまま続いています。資本主義経済社会は、先の見えないるつぼの中にあります。

貧者はいつまでも貧者である

資本家(資本提供者)が経営者(日本では執行役員かな?)を雇い、多くの労働者を賃労働で雇い入れ、利潤を生み出しています。この利潤は資本家に独占され、労働者は指一つ触れることはできません。

安い賃金が利潤を生んでいるので当然なのですが、労働者が賃金の引き上げを求めても、それは満たされる訳がありません。会社が儲かれば社員にもおこぼれが……、資本家が潤えば労働者も潤う……、こんなことはありえません。

安倍総理の言う「大企業が良くなれば中小企業も良くなる」「もう少し待って下さい。アベノミクスが日本の隅々まで、その恩恵を広げていきます」など、実現するはずがないのです。

生産共同体を創る

このような現代資本主義社会において、富者も貧者も生まない仕組みは作れないものでしょうか。その答えとして、私は、雇われて働くのではない働き方、言い換えると「生産共同体」による生産を模索していきます。この「生産共同体」は、次のような特徴を持つ組織であり、その実践は、これまで全く経験のない新しい試みであります。

●参画する者全てが共同して、経営し、生産し、分配する。
●生産やサービスの提供をせず、資本だけ投じて利潤の配当を得ようとする者は、参画させない。
●生産共同体の主旨を理解し自立的に働く構成員で運営するので、各自の意志に反する働き方を強いられることはない。
●構成員の合意により選出されたリーダーの指導力で運営する。
●構成員が生活するための資金と、共同体を存続させるためのリスクヘッジに必要な資金(内部留保)の合計分の収益を得るに留め、無目的・無制限な増産・増益をめざさない。
●数人から数十人程度の、意思伝達がし合える程度の集団で運営する。

民主主義・平和主義を守る

人々はこれまで、国家や自治体に不満や要求を述べてはきたものの、自ら政治や行政に関わることは避けてきました。しかし、自らの果たすべき役割を自覚した人々が生産共同体を創り、その社会的意義を強く認識しながら、儲けの追求だけの現代企業と異なった生産組織を模索していくことで、貧富の差のない新しい社会状況に変えていくことができます。

この生産共同体を創るのに、現行の政治体制や官僚機構を打倒する必要はありません。民主主義が定着している現在のわが国では、生産共同体の運営が阻害されることはないからです。

ただ、だからこそ、生産共同体は、今まさに社会で問題とされている平和主義と同様、民主主義を守っていかなければなりません。これらが侵されれば、生産共同体の経営も市民生活も何もかもが崩れてしまいます。

民主主義、平和主義を守り、生産共同体を創設・運営することで、無血革命を実現していきます。(四十八)

遊自耕140に戻る

遊自耕142号を見る