当社代表桑原によるコラム「遊自耕」は、隔月発行の建築情報誌「飛翔」誌上にて連載しています。飛翔の送付をご希望の方は、飛翔送付申込フォームよりお申込下さい。(送付無料)

遊自耕91号

談合が無くなればそれで良いのか?

姿を消しつつある談合

昨年1月の改正独占禁止法施行から、1年4ヶ月がたちました。

「談合」、すなわち各社の談合担当者(業界では業務担当者という)が定められたアジトで日常的に案件毎の受注権を決定したり、入札前に役所の近くの喫茶店で入札フダを分配(談合の仕切り役が入札参加各社の入札金額を通知)したりといった“業者の話し合い”は、今やほとんど壊滅状態にあるようです。

また、専ら談合の為に自治体毎に組織されていた○×会も解散し、機能しなくなってきているようです。

当社が参加したわずか数回の公共工事入札の会場でも行われていた、受注権を得た会社が落札するために各社の業務担当者が一堂に会し札をいれるというセレモニーも、電子入札が主流になったこともあり、姿を消していくことでしょう。

一般競争入札なら良いのか?

これまで公共工事は、ほとんどが指名競争入札で行われてきました。

この指名競争入札も、談合防止の要請から、一般競争入札に変わっていく—本当は一般競争入札が法律上の原則であり、その原則に戻るだけのことですが—気配が濃くなってきたようです。

しかし、まだまだ手放しで喜ぶには程遠い状態であると言わざるを得ません。本当の価格競争が行われない仕組みがあるからです。
例えば、「予定価格」「失格基準価格」という“官僚が設定する落札価格の上限・下限”制度や、最近始まった「総合評価制度」です。

これまでは業者間の競争が調整され、予定価格に近い金額で落札されてきましたが、談合がなくなれば今度は、失格基準価格を予測してその金額ぎりぎりの入札が行われます。

しかし、その失格基準価格の設定が、“業者・業界の要請”によりどんどん予定価格に近づけられていき、失格基準価格より安く入札できる業者が落札できなくなって、落札価格がどんどん高くなっていくのです。

また、入札金額だけでなくそれ以外の要素も評価する「総合評価」が拡がってきていますが、この制度の実質は、失格基準価格上に並んだ業者のうち高い総合評価点を得る条件を持った業者にしか落札のチャンスを与えないもので、特定の業者を落札させる結果を生んでいます。

官僚による“トカゲの尻尾切り”

談合は、その実態がこれまで白日の下にさらされてこなかったため、その本質もまた明らかにされていませんでした。

談合は官僚が天下りをはじめとした利権を維持し、税金の私的着服をシステム的に日常化する手段です。

この官僚体制は未だ無傷です。だから、談合や指名競争入札がなくなる気配が見えても、自由な競争はなされません。

建設業者を縄にかけ入札制度をいじっても、“トカゲの尻尾切り”にすぎず、先に述べたように、そこには官僚が利権維持のための何重ものバリアを張っています。

官僚により作られた建築の企画・発注から工事完成までのシステムを見直し、作り直さなければ、税金の無駄使いは改善されません。

だから、何度でも言い続けます。“お縄にかけるのは官僚(下級職員ではない)”

入札制度の根本的解決を

安いからといって悪く作らせていい訳がありません。しかし、悪く作らないためには必ず高く発注しなければならないというのも、理屈に合いません。

まず、予定価格と失格基準価格を撤廃し、本来の入札の目的である価格競争を十分に促すことが重要です。

そのうえで、工事規模や難易度により入札参加業者に制限を附して一般競争入札を行い、価格以外の評価点(技術力、財務力、社会貢献、地域特性等)を加算して高得点の業者に落札させることです。

この方法は競争を誘発して低価格での落札を実現するとともに、品質目標を達成する現実的方法だと思います。

入札を官僚のためのセレモニーにし続けてはなりません。公共工事で「良いものを安く」実現することこそ本来の目的だからです。

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