当社代表桑原によるコラム「遊自耕」は、隔月発行の建築情報誌「飛翔」誌上にて連載しています。飛翔の送付をご希望の方は、飛翔送付申込フォームよりお申込下さい。(送付無料)

遊自耕88号

建設業にカンブリア紀の変革を

「カンブリア宮殿」に出演

9月30日、「カンブリア宮殿」といTV番組の録画取りに行ってきました。

司会は村上龍さんと小池栄子さん、「公共事業入札改革の行方」というタイトルで、長野県で脱談合を宣言して苦悩する第一測量設計コンサルティング社長の近藤恒雄さん、建設省の官僚出身で建設業界の代弁者と見られている自民党参議院議員の脇雅史さん、それに私の3人がゲストとして招かれました。(この番組は10月2日にテレビ東京系で放映されました。)

“建設談合はなくなるのか”を一般の納税者に問うという内容のなかで、脇さんから”公共工事において、建設業者を市場経済原理(自由競争)にさらして良いか”という問題提起がありました。

が、この問題はさわりに触れただけで終わってしまい、私も舌足らずで言いたいことが言い切れませんでしたので、今回の遊自耕ではこの続きをお話しします。

建設業は官民一体の業界

談合を実施するのは建設業者ですが、談合は建設業者自身が主体的に行っているものではなく、官僚が組み立てた仕組みに従ってやっているものです。

それは、そうしなければ建設業者は生きていけないという歴史があるからです。

戦後間もなく誕生した建設省は、焦土と化した国土を急速に復興させるため、建設業者を統括し、自ら育ててきました。

つまり、建設業界は建設工事を行う業者の単なる集合体ではなく、主導的地位に立つ官が企画し指令する工事を、その僕である建設業者が実施するという形で発展し、それが現在でも続いているという官民一体の業界で、この視点で見なければ、談合問題の本質が見えてきません。

そして、“建設業者を自由競争にさらしてはならない”という脇さんの主張はこの歴史に沿ったもので、建設業者擁護のように聞こえますが、実は官僚の持つ強大な権威と利得を失わないためのものに過ぎません。

天下り問題についても、一概に悪と見ず、建設業の中に有能な人材を配置するという意義を主張していますが、実態を知る者が聞いたら笑止千万。

出身官庁からの情報収集と受注調整の外に、民間企業が天下り役人に期待するものは何もありません。

官僚組織の存続のために、発注官庁から半ば強制的に押し付けられ、高額な報酬を払っているというのが、天下り制度の正しい見方でしょう。

もっと批判を

長野県では、指名競争入札を原則一般競争入札の仕組みに変え、落札率が急落しました。国交省発注工事でも、低価格入札者に対してさまざまな制約が加えられているにもかかわらず、その落札率は下がっています。

長く続いてきた官民一体の体制は、昨今の国民的な批判にさらされて、ようやくその一部が揺らいできているのかもしれません。

しかし、品質確保(安いものは悪い)という大義名分(迷分?)を掲げて、予定価格を大きく下回る落札を阻止しようとする新たな仕組みを作る動きが、官僚指導で活発になっているのも事実です。

また、地方になればなるほど、まだ旧い体制が維持されています。

このような反動に対して、多くの市民が、納税者が、強い批判を浴びせ続けていかなければ、談合体制は変わりません。

もちろん、批判の対象は業界談合の元締めである官僚です。

そして自ら脱談合を

官の要請に応え談合を続けていたら、何より建設業自体が社会の変化に見放され、自滅してダメになってしまいます。

だから、己のためにも、建設業各社が自ら脱談合を宣言していくことが大切なのではないでしょうか。

収録日は、こんなことをあらためて感じた一日でした。

カンブリア紀とは

今から約5億5000万年前… 「カンブリアの大爆発」と表現される地球生命の歴史上の大変革が起きた。現在も化石として、その姿が残る“多様な生物”が、一斉に地球上に出現したのだ。三葉虫が栄えたこの時代は「カンブリア紀」と呼ばれる。 「カンブリア紀」は未来への進化を担った時代なのである。(カンブリア宮殿ホームページから)

遊自耕87号に戻る

遊自耕89号を見る

このページのトップに戻る