当社代表桑原によるコラム「遊自耕」は、隔月発行の建築情報誌「飛翔」誌上にて連載しています。飛翔の送付をご希望の方は、飛翔送付申込フォームよりお申込下さい。(送付無料)

遊自耕106号

緩和ではなく、改正が見えてきた

新政権に期待

国土交通大臣に前原誠司氏が就任しました。

八ッ場ダム、日航問題など、時を移さず多くの課題に果敢に取り組む大臣の姿に、敬意と信頼を感じています。

そんな中大臣は、「建築基準法の改正案を来年の通常国会に提出したい」との意向を明らかにされ、改正の狙いとして3つの方向性を示して省内に検討を指示されました。

そして、この改正作業は、官僚や学識経験者、業界団体の代表からだけでなく、多くの人達から意見を集めて行われようとしています。

このような動きにとても大きな期待を寄せると同時に、自らもそのために役割を果たすべく努力していきます。

官僚支配と共生してきた前政権

新政権誕生までは、建築基準法を改正することなど全く問題にされませんでした。

大部分の業界団体は、天下の悪法の立案者であり実施者である国交省高級官僚に頭を下げ、己の利得のために法の運用緩和を懇願していたにすぎません。

ですから、良い建築を安く手に入れることを願う建築主の要望などは全く届かないし、法によって悪者に仕立てられてしまった大方の善良な設計者、その他建築に携わる技術者や技能者達はみな諦めの境地で、希望を失っていました。

また、この悪法により、激減した住宅着工戸数は一向に回復せず、わが国の景気の停滞が長引く結果を生み出しています。

諸悪の根源は官僚であるのに、その頭目をそのままにして緩和を懇願する。こんな馬鹿げたことはやめなければならなかったのです。

法改正成否の要点

これから法改正を行うにあたって、私は、以下のようなスタンスを持つことが重要であると思います。

  • 建築発注者(建築主)や建築購入者にとって「良い建築を安く入手する」ことに資する内容とする。特に住宅については、貧富の差なくすべての国民が手に入れられるような低コストのものとなるよう、コスト増加の要因となるような規制を極力なくす。
  • 設計者の創造力が発揮できる余地を大幅に確保する。
  • 現に圧倒的多数の設計を行っている(所員が1人あるいは数人の)零細設計事務所の事務所経営を不可能にするような、過剰な設計工数をかけさせる規制をなくす。
  • 建築需要を喚起させ、景気回復につながる内容とする。
  • 緊急課題については早急に改正日程に乗せるとともに、現在の建築基準法および関係諸法の内容全体を一定の時間をかけてゼロベースで見直し、根本的に改正する。
  • 国家的視野に立ち、行財政改革を推進する内容とする。特に、設計および工事監理に関して行政(官僚)が関わる範疇を整理縮小し、行政職員の大量縮減を実現する。

新政権は官僚支配と闘うことを基本に誕生しました。だから前政権ではなされなかった法改正を打ち出すことができたのです。

すなわち、この官僚支配と闘うというスタンスがなにより重要であり、これを貫いていけるのか妥協してしまうのかにより、法改正の成否は分かれます。

建築関連諸法に深く関わる者の1人として、新政権の今後の動きを期待を持って見守るとともに、これからも積極的に新政権の脱官僚姿勢を支える活動をしていきたいと思います。

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