トップページ希望社について公共工事に関する取組み北東部コミセン工事報告>2006年11月30日請負代金変更に関する、中央建設工事紛争審査会への仲裁申請について

請負代金変更に関する、中央建設工事紛争審査会への仲裁申請について

北東部コミュニティーセンター及び岐阜北消防署三輪出張所建築主体工事の竣工前に、JVは発注者である岐阜市と、設計変更に伴う変更請負金額についての協議を行いました。しかし、その金額についての合意が成立しないまま岐阜市は協議を終了させ、一方的に、JVの主張より大幅に少ない変更金額を決定してJVに通知し、支払いを済ませてしまいました。(やりとりの詳細は、工事費精算協議にあたってのやりとりで紹介しています。)

JVは、この岐阜市の対応に納得せず、平成17年12月に「中央建設工事紛争審査会」という国土交通省の機関に、「岐阜市はJVの見解に基づいて代金を支払え」という仲裁申請をしました。(JVがこのような手続きをしたのは、「発注者と請負者との間に紛争が生じた場合は、裁判所に訴えるのでなく中央建設工事紛争審査会に解決を求める」という合意が、この工事の請負契約でなされていたからです。)

その後数回にわたって紛争審査会が開催されて、3名の仲裁委員によって審理がなされ、平成18年11月30日に「仲裁判断(裁判所の判決にあたるもの)」が出されました。

結果、JVの請求は認められませんでした。しかし、「市の通知をもって一方的に金額が確定する」という不当な市の主張が明確に否定されたり、審査会が市に対して今後の工事において設計内訳書単価の公表を求めたりと、意義のあるものとなりました。

ここでは、この紛争の概要と紛争審査会での両者の主張、および仲裁判断について、ご報告します。

1.紛争の概要

(1)この工事の施工中に、岐阜市からJVに対していくつもの設計変更指示がなされたが、その指示のなされた時点では、設計変更に伴って生ずる請負代金額の変更についての協議はなされなかった。

(2)平成16年9月に4回にわたり、請負代金額の変更についての協議がなされた。
変更によって生じる変更請負金額(当初の請負代金額に対する増減額)についての両者の見解は対立し、合意に至らなかったが、岐阜市は請負契約約款第24条第1項を根拠に協議開始から14日の経過をもって協議を終了し、後日変更請負金額を決定してJVに通知した。

その後、岐阜市はその決定に基づいて、請負代金残額の支払を行っている。

第24条第1項:請負代金額の変更については、甲(発注者)乙(請負者)協議して定める。ただし、協議開始の日から14日以内に協議が整わない場合には、甲が定め乙に通知する。

2.両者の主張(主要な論点のみ抜粋)

両者が紛争審査会において主張した内容は以下のとおりである。

1.JVの主張:変更請負金額は4,017,352円

(1)両者の協議においては、設計変更の内容(資材・手間等の項目)と数量については、ほぼ合意している。したがって、両者の変更請負金額に差異が生じるのは、単価の差によるものである。

(2)変更請負金額の算出に使用する単価は
(ア)設計変更の内容が、JVが入札・請負契約時に市に提出した見積内訳書に記載されている材料・手間の増減である場合は、その見積内訳書記載の単価
(イ)設計変更の内容が上記見積内訳書にない新たな材料・手間の増加である場合は、JVがその材料・手間の調達先である専門工事会社・メーカーとの請負契約・売買契約で取極めもしくは支払った金額に基づいて市に提示する金額をベースに、JVと市が協議して決定する単価(但し、この協議が整わなかったので、仲裁申請においてはJVの提示する単価を使用して変更請負金額を算出している)
である。

(3)市はJVとの協議において、金額算出の根拠とする単価の多くを黒塗りにして公開しておらず、市の使用した単価はその妥当性すら確認できないものである。

2.岐阜市の主張:変更請負金額はマイナス12,600円

(1)請負契約約款第24条1項は、市がJVに変更請負金額を通知することにより両者の債権債務が確定することを定めたものである。

(2)変更請負金額は、増減した資材・手間等の数量に市の予定価格(市の設計内訳書の単価)を掛け、さらにこの工事の落札率を掛けて算出する。この方法は、
(ア)公共工事の財源は税金であるから、金額の決定についても客観性が求められる。
(イ)市の設計内訳書記載の単価は、「建設物価」等の刊行物記載の単価、およびそれらにないものは複数の業者から徴収した見積のうち最低価格のものに実勢取引状況を考慮した「低減率」を掛けて算出した単価であり、客観的で適正なものである。
(ウ)落札率を掛けるのは、国の基準である「公共建築工事積算基準」の規定によるもので、合理的である。

(3)JVが入札・契約時に提出した請負代金内訳書は、設計内容に誤解がないようにするためのもので、その単価は変更請負金額算出の根拠にはならない。

(4)市は請負契約後にJVに対して、JVが入札・契約時に提出した見積内訳書の数量・単価等を市の意向にそって書き直すよう指示しており、その指示内容から市の設計内訳書記載の単価がおおよそわかるはずである。

3.JVの再反論

(1)「市の通知をもって債権債務が確定する」とすることは、契約約款第52・53条の趣旨に反する。

契約約款第52条・53条の趣旨:この約款の各条項において甲(発注者)乙(請負者)協議して定めるものにつき、協議が整わなかったときに甲が定めたものに乙が不服がある場合、甲及び乙は紛争審査会に仲裁を求めることができ、その判断に服する。

(2)市の設計内訳書単価は、現実の工事単価と異なる(関係ない)ものであり、さらにそれに一律に落札率を掛けることにより、個々の単価はますます現実の単価とかけ離れたものになる。

(3)この工事の契約は総価一式請負契約であるので、JVが入札・契約時に提出した見積内訳書記載の単価が当然に契約内容になるわけではないが、市の設計内訳書記載の単価もまた契約内容ではない。
また、国の積算基準は公共発注者の積算手続きを定めたものにすぎず、契約当事者両者を拘束するものではない。
JVは、この見積内訳書の単価に基づいて請負金額総額を算出し落札したのであるから、その単価を参考に変更請負金額を算出することには合理性がある。

(4)市の設計内訳書記載の単価が、そこに記載されているというだけで当然に合理性・妥当性があることにはならない。
市が設計内訳書の根拠としている刊行物記載の単価が実勢価格とかけ離れたものであることは周知の事実であるし、市が専門工事会社から徴収した見積金額に掛けたという「低減率」も根拠に乏しいものであり、妥当性があるとはいえない。

(5)客観性がある単価とは、公開されてその妥当性が確認できるものであるから、黒塗りにされた市の単価は客観性があるとはいえない。

(6)JVは、書き直した見積内訳書の提出時に、市の公共建築室長に書き直しの目的を尋ねたが回答が得られなかったため、「専ら市の事務手続上の必要から提出するもので、請負代金の変更等の根拠としない」旨の確認をしている。

3.紛争審査会の判断

主文:JVの請求は棄却する。
理由:
(1)工事請負契約が民法上の契約である以上、価格(変更請負金額)は双方の合意があって定まるものであり、公共工事であっても通知で一方的に決まるものではない。

契約約款第24条1項は、協議が整わない場合事務処理が進まないので通知価格を以って一旦処理するという意味で、通知内容に合理性がなければ紛争審査会により解決を図ると考えるのが正しい。

(2)設計変更に伴う変更請負金額に関する両者の主張の合理性は、主な違いのある変更工事を抽出し、そこで示された個々の内容・金額を具体的に検討することで判断する。(どのような単価を使用してどのように算出すべきかといった算出方法自体についての抽象的判断は行わない。)

(3)JVが示した主な違いがある変更工事7項目について検討した結果、市の計算に若干の疑問符がつくものの、積極的にそれに反する(JVが主張している)価格が妥当との材料を見出せないので、JVの請求は棄却する

(4)本件紛争を全体として見てみるに、市の予定価格(設計内訳書単価)なるものが公表されていない為、設計変更の段階でJVは何を基準に協議してよいか分からないということに、紛争の大きな原因がある。

入札後に業者(JV)の見積を総額は変えずに内訳を増額したり減額させるということは決してフェアなことではなく、予定価格を一つの基準として公表すれば紛争は避けられる。最近透明性の高い行政が求められるようになっているが、市においてはなるべく公表できるものは公表し、こうした紛争が繰り返されないよう配慮することを求める。

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